■書ききれなかった数の話(その9)

 どのような整数nが

  n=ax^2+2bxy+cy^2

の形式によって表現されるのであろうか?

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【1】2元2次形式

  P=ax^2+2bxy+cy^2   (D=b^2−ac)

を線形変換

  [x]=[α,β][x’]

  [y]=[γ,δ][y’]

すると

  P’=a’x’^2+2b’x’y’+c’y’^2   (D’=b’^2−a’c’)

  D’=r^2D,r=αδ−βγ

となる.ここで,判別式Dは特別な仕方で変化する量(D’=r^2D)であって,もしr^2=1ならば変化しない不変式である.

 x^2+y^2は4n+1型素数をすべて表現し,どの4n+3型素数も表現しない.2平方和定理は「4で割ると1余る素数ならば,p=x^2+y^2となる自然数が存在する」であるが,フェルマーはまた,

  「pが8で割ると1または3余る素数ならば,p=x^2+2y^2」

  「pが8で割ると1または7余る素数ならば,p=x^2−2y^2」

  「pが3で割ると1余る素数ならば,p=x^2+3y^2」

となる自然数x,yが存在することを発見した.p=x^2+y^2,p=x^2+2y^2,p=x^2−2y^2,p=x^2+3y^2,・・・などの発見は,類体論の序曲をなすものといえる.

 一般に

  N=x^2±Dy^2

によって表現される数Nの約数pは,同一の判別式Dをもつ

  p=ax^2+2bxy+cy^2   (D=b^2−ac)

によって表現されることから,x^2±Dy^2を主形式と呼ぶ.

[補]方程式x^2+y^2=nの整数解の個数は,nの4ν+1型の約数の個数と4ν+3型の約数の個数との差の4倍に等しい.方程式x^2+2y^2=nの整数解の個数は,nの8ν+1型または8ν+3型の約数の個数と8ν+5型または8ν+7型の約数の個数との差の2倍に等しい

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【2】2元2次形式による整数の表現と15の定理

 1996年,コンウェイとシュニーバーガーは正定値2元2次形式

  f(x,y)=ax^2+bxy+cy^2=n

が1から15までのすべての整数を表せば,それがすべての整数を表すことを示した(15の定理).

 もっと限定していえば

  1,2,3,5,6,7,10,14,15

の9つの数を表現するならば,すべての整数を表現するという定理である.

 この定理はルジャンドルの4平方和定理「何種類かの4変数2次形式,たとえば,

  x^2+y^2+z^2+mw^2   (m=1,2,3,4,5,6,7)

はすべての正の整数を表現することができる」も内包していて,

  1=1^2,2=1^2+1^2,3=1^2+1^2+1^2,5=2^2+1^2

  6=2^2+1^2+1^2,7=2^2+1^2+1^2+1^2,10=3^2+1^2

  14=3^2+2^2+1^2,15=3^2+2^2+1^2+1^2

 5変数2次形式,たとえば,

  a^2+2b^2+5c^2+5d^2+15e^2

はどの整数も表すことができる.

 それに対して,普遍的な3変数2次形式は存在しない.たとえば,

  f(x,y,z)=x^2+2y^2+yz+4z^2

は1から30までの整数をすべて表すが,31を表すことはできない.他の3元2次形式はこんなにうまい具合にはなっておらず,31以下の整数の中のどれかを表すことができないのである.

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[補]nが判別式dのある2次形式で表現されるための必要十分条件は

  x^2=d  (mod 4n)

が解をもつことである.

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