■n次元の立方体と直角三角錐(その314)
【1】An型ルート格子
|A2 |=|2 1|=3
|1 2|
|2 1 0|
|A3 |=|1 2 1|=4
|0 1 2|
は容易に計算できる.
・−・・・・・−・
をAn のディンキン図形とすると,An+1は左から・−を作用させた
・−・−・・・・・−・
すなわち,
・−(An )
であるから,その隣接行列式は
|2 1 ・・ 0| |2 1 ・・ 0|
|An+1 |=|1 2 ・・ 0|=|1 |
|0 1 ・・ 1| |0 An |
|0 0 ・・ 2| |0 |
で表される.
右辺を第1行について展開すると
|1 1 0 ・・ |
|An+1 |=2|An | −|0 An-1 |
|0 |
次に,第1列について展開して
|An+1 |=2|An | −|An-1 |
このことから,
|An+1 |−|An |=|An | −|An-1 |
=・・・=|A3 | −|A2 |=1
であり,したがって,数列{|An+1 |−|An |}は公差1の等差数列であることがわかり,
|An |=1+n
が得られる.
===================================
次に,
|2 1 ・・ 1| |2 1 ・・ 0|
|1 2 ・・ 1| |1 2 ・・ 0|
|1 1 ・・・1|=|0 1 ・・ 0|=1+n
|1 1 ・・ 1| |0 0 ・・ 1|
|1 1 ・・ 2| |0 0 ・・ 2|
を示してみよう.
なぜ,このようなことをするのかというと,例えば,3次元の平行六面体の体積は
V^2=|a↑・a↑ a↑・b↑ a↑・c↑|
|b↑・a↑ b↑・b↑ b↑・c↑|
|c↑・a↑ c↑・b↑ c↑・c↑|
で与えられ,点の配置が立方格子の格子線の交角を60°になるようにゆがめたとき,グラミアンは
|d^2 d^2/2 d^2/2| |2 1 1|
G=|d^2/2 d^2 d^2/2|=(d^2/2)^3|1 2 1|
|d^2/2 d^2/2 d^2| |1 1 2|
として得ることができるというのがその理由である.
===================================
3次の行列式であれば,行列式を展開して
|2 1 1| |2 1 0|
|1 2 1|=4,|1 2 1|=4
|1 1 2| |0 1 2|
であることを確認することができる.しかし,直接
|2 1 1|
|1 2 1|
|1 1 2|
を
|2 1 0|
|1 2 1|
|0 1 2|
に変形することは難しいだろう.
|2 1 ・・ 0|
|1 2 ・・ 0|
|0 1 ・・ 0|=1+n
|0 0 ・・ 1|
|0 0 ・・ 2|
は既に証明済みであるから,
|2 1 ・・ 1|
|1 2 ・・ 1|
|1 1 ・・・1|=1+n
|1 1 ・・ 1|
|1 1 ・・ 2|
を示すことによって,両辺が一致することを確認してみよう.それでも立派な証明だろう.
まず,第1行を他の行から引いて
|2 1 ・・ 1| |2 1 ・・ 1|
|1 2 ・・ 1| |−1 1 ・・ 0|
|1 1 ・・ 1|=|−1 0 ・・ 0|
|1 1 ・・ 1| |−1 0 ・・ 0|
|1 1 ・・ 2| |−1 0 ・・ 1|
さらに第2列〜第n列を第1列に加えれば
|2 1 ・・ 1| |1+n 1 ・・ 1|
|−1 1 ・・ 1|=| 0 1 ・・ 0|
|−1 0 ・・ 0|=| 0 0 ・・ 0|
|−1 0 ・・ 1| | 0 0 ・・ 0|
|−1 0 ・・ 2| | 0 0 ・・ 1|
のように上三角行列式となる.
三角行列の行列式の値は対角要素の積になるから,
|2 1 ・・ 1|
|1 2 ・・ 1|
|1 1 ・・ 1|=1+n
|1 1 ・・ 1|
|1 1 ・・ 2|
となることが証明されたことになる.
===================================