■4次元正多胞体の包含関係(その9)

【1】4次元の空間充填形

 (4,3,3,4)(3,3,4,3)(3,4,3,3)はそれぞれ正8胞体,正16胞体,正24胞体による4次元の空間充填形です.

 このうち,(4,3,3,4)は正8胞体(4次元超立方体)による空間充填形で,格子点を順次結んでできる4次元単純立方格子をなしますから,ハミルトンの四元数

  H=a+bi+cj+dk

において,a,b,c,dを整数に限った「四元整数」と同一視することができます.

 四元整数は乗法の交換法則が成り立たない非可換体(環)ですが,4次元空間内の原点を中心とする半径√nの3次元球面上には必ず格子点があることを主張しているのが「ラグランジュの定理」です.

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【2】高次元の星形正多胞体

 空間充填系と星形正多胞体は拡張された正多胞体と考えることができます.したがって,正多胞体,空間充填形の次には星形正多胞体の話をするのが筋でしょう.

 3次元星形正多胞体が4通りしかないことは,1811年,コーシーによって証明されています.正多面体では

  1/p+1/q>1/2   (p,q≧3)

でしたが,星形正多胞体p,qに5/2も許すのですが,結局,p,qは3,5,5/2しか許されません.星形正多面体ではp,qは整数とは限らず,有理数になるのですが,辺数はすべて30本,基本単体数120個です.また,複合正多面体(雪形正多面体)5通りであることが知られています.

 4次元星形正多胞体の場合,正多胞体の

  1/p+1/q>1/2   (p,q≧3)

  1/q+1/r>1/2   (q,r≧3)

において,p,q,rは3,4,5,5/2しか許されません.結局,4次元星形正多胞体が10通りであることは,1915年,ファン・オスが不完全ながら証明し,1931年,コクセターにより完全な証明が与えられました.その基本単体数14400個です.4次元雪形正多胞体は46通りあります(コクセター,1933年).1種類の星形多角形による平面充填は不可能なのですが,4次元星形正多胞体による4次元空間充填も同様の結果(不可能)です.

 なお,5次元以上の星形正多胞体も不可能ですから,星形正多胞体は4次元で多彩となり,そこで突然終わりになる・・・5次元以上にはそもそも星形正多胞体がないので,5次元以上では3種類の標準正多胞体がすべてということになります.

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【3】4次元正多胞体の包含関係の拡張

 1811年のコーシーの証明は,今日の用語を使うと,星形正多面体の自分自身への変換群が3次元空間の回転群の有限部分群であり,それが正20面体群の場合しかないことを示しました.

 同様に4次元星形正多胞体の場合をヘスが示したのですが,このことによって,4次元120胞体は他の4次元正多胞体,10種類の4次元星形正多胞体を包含することのできる万有多胞体ということになります.

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