■デューラーの八面体の製作(その8)
合同な菱形だけでできている多面体について考えます.平行六面体となる菱面体には2種類(太った菱面体とやせた菱面体)あって,細めで尖ったほうがacute(扁長菱面体),太めで平たいほうがobtuse(扁平菱面体)と呼ばれています.
黄金菱形六面体の場合,acute(扁長菱面体)はA6,obtuse(扁平菱面体)はO6と略記されます.
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【1】黄金菱形六面体の体積
A6(acute)の体積から確認しておきましょう.菱形の対角線の長さを2dと2,また,この菱形の鋭角が60°より大きく90°より小さいとすると,dの取りうる値は
1<d<√3
の範囲にあります.
また,菱形の鋭角が3つ集まって構成される頂点を原点として,この菱面格子の3つの基本ベクトルを
a↑=(d,1,0)
b↑=(d,−1,0)
c↑=(x,0,z),x^2+z^2=d^2+1
とおきます.
このとき,菱形の面積,体積は
S=2d,V=2dz
菱形の鋭角をθとおくと
tan(θ/2)=1/d → θ=2arctan(1/d)
で表されます(60°<θ<90°).
次に,xとzをdで表してみることにしましょう.
a↑・c↑=(d^2+1)cosθ=dx
より
x=(d^2+1)/dcosθ
=(d^2+1)/dcos(2arctan(1/d))
=(d^2−1)/d
z^2=d^2+1−x^2=3−1/d^2
ベクトルc↑とx軸のなす角φは
cosφ=x/(d^2+1)^(1/2)=(d^2−1)/d(d^2+1)^(1/2)
で求められますが,このように菱形六面体の計量値はすべてパラメータdを用いて表すことができます.
V=2dz=2d(3−1/d^2)^1/2
を辺の長さ1に規格化すると,
V=2d(3−1/d^2)^1/2/(d^2+1)^(3/2)
d=τとおくと
V=2/5・{(5+√5)/2}^1/2
一方,ミンコフスキー和の計算は,
v1(τ/2,τ/2tanπ/5,1/2)
v2(τ/2secπ/5cos3π/5,τ/2secπ/5sin3π/5,1/2)
v4(τ/2secπ/5cos7π/5,τ/2secπ/5sin7π/5,1/2)
をそれぞれノルムで割って規格化したものから3つ選ぶ,すなわち(3,3)個の項をもつ.その結果も
V=2/5・{(5+√5)/2}^1/2
となって,2つの方法で計算した結果が一致することが確認できた.
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O6(obtuse)の体積とA6(acute)の体積は等しくはありません.底面積が同じであっても高さが異なるからです.菱形の鋭角が3つ集まって構成される頂点を原点として,この菱面格子の3つの基本ベクトルを
a↑=(1,d,0)
b↑=(1,−d,0)
c↑=(x,0,z),x^2+z^2=d^2+1
とおきます.
このとき,菱形の面積,体積は
S=2d,V=2dz
菱形の鈍角をθとおくと
tan(θ/2)=d → θ=2arctan(d)
で表されます.
次に,xとzをdで表してみることにしましょう.
a↑・c↑=(d^2+1)cosθ=x
より
x=(d^2+1)cosθ
=(d^2+1)cos(2arctan(d))
=1−d^2
z^2=d^2+1−x^2=3d^2−d^4
ベクトルc↑とx軸のなす角φは
cosφ=x/(d^2+1)^(1/2)=(1−d^2)/(d^2+1)^(1/2)
で求められます.
V=2dz=2d^2(3−d^2)^1/2
を辺の長さ1に規格化すると,
V=2d^2(3−d^2)^1/2/(d^2+1)^(3/2)
d=τとおくと
V=2/(5τ)・{(5+√5)/2}^1/2
一方,ミンコフスキー和の計算は,
v1(τ/2,τ/2tanπ/5,1/2)
v2(τ/2secπ/5cos3π/5,τ/2secπ/5sin3π/5,1/2)
v3(−τ/2secπ/5,0,1/2)
をそれぞれノルムで割って規格化したものから3つ選ぶ,すなわち(3,3)個の項をもつ.その結果も
V=2/(5τ)・{(5+√5)/2}^1/2
となって,2つの方法で計算した結果が一致することが確認できた.
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