■デューラーの八面体の製作
以前,デューラーの八面体の榎本説(72°説)は,球に内接するが無限入れ子の方に若干のずれがあったことをレポートした.
球に内接しかつ無限入れ子構造となるための条件は,
t=2(d^2−1)/(d^2+1)=3/5
したがって,
d=√(13/7)
このとき,頂角θは
θ=2arctan(1/d)=72.5425°
で与えられる.
透明な素材で,デューラーの八面体を作りたいのであるが,クリスタルガラスでは高くつく.アクリル素材だとしても金型代は馬鹿にならない.しかし,せっかく金をかけて作るのであれば,
θ=2arctan(1/d)=72.5425°
のものを作るべきであろう.
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【1】菱形六面体の計量
菱形の対角線の長さを2dと2,また,この菱形の鋭角が60°より大きく90°より小さいとすると,dの取りうる値は
1<d<√3
の範囲にあります.
また,菱形の鋭角が3つ集まって構成される頂点を原点として,この菱面格子の3つの基本ベクトルを
a↑=(d,1,0)
b↑=(d,−1,0)
c↑=(x,0,z),x^2+z^2=d^2+1
とおきます.
このとき,菱形の面積,体積は
S=2d,V=2dz
菱形の鋭角をθとおくと
tan(θ/2)=1/d → θ=2arctan(1/d)
で表されます(60°<θ<90°).
次に,xとzをdで表してみることにしましょう.
a↑・c↑=(d^2+1)cosθ=dx
より
x=(d^2+1)/dcosθ
=(d^2+1)/dcos(2arctan(1/d))
=(d^2−1)/d
z^2=d^2+1−x^2=3−1/d^2
ベクトルc↑とx軸のなす角φは
cosφ=x/(d^2+1)^(1/2)=(d^2−1)/d(d^2+1)^(1/2)
で求められますが,このように菱形六面体の計量値はすべてパラメータdを用いて表すことができます.
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【2】菱形六面体の切頂
菱面体の中心の座標は(d+x/2,0,z/2)ですから,8頂点のうち6つ
(d,1,0),(d,−1,0),(2d,0,0)
(x,0,z),(d+x,1,z),(d+x,−1,z)
までの距離rはすべて等しく
r^2=(x^2+z^2)/4+1=(d^2+5)/4
と計算されます.すなわち,これらは半径Rの同心球面上に位置します.
しかし,菱形の鋭角が3つ集まって構成される2つの頂点
(0,0,0),(2d+x,0,z)
はこの球には内接しません.その頂点までの距離は等しく
R^2=(d+x/2)^2+(z/2)^2=(9d^2−3)/4
そこで,この頂点を切頂して同心球面上に位置するようにします.
球との交点を,パラメータt(0<t<1)を用いて
(td,t,0),(td,−t,0),(tx,0,tz)
とすると,tは2次方程式
(d^2+1)t^2−(3d^2−1)t+2d^2−2=0
の解に帰着され
t=2(d^2−1)/(d^2+1)
と計算されます.
切頂によって新たにできる三角形は1辺の長さが2tの正三角形で,切頂される三角錐は底面積S’=t^2d,高さtzですから,その体積は
V’=t^3zd/3
t=2(d^2−1)/(d^2+1)
z^2=d^2+1−x^2=3−1/d^2
で計算されることになります.2個あわせて菱形6面体(V=2dz)のt^3/3倍となるというわけです.
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【3】デューラーの八面体の木工製作
ここで考える菱形六面体は1<d<√3,すなわち菱形面の鋭角が60°<θ<90°の範囲にあるものです.また,A,B,Cを菱形六面体からデューラーの八面体を作るために必要な諸計量値を
cosφ=(d^2−1)/d(d^2+1)^(1/2)
B=π/2−φ
tanA=1/dcosB
cosC=2/(3(d^2+1))^(1/2)
とします.A,Bは菱形六面体を作るのに必要な計量値,Cとt(前述)が切頂に必要な計量値です.
θ=72.5425
A=38.3288
B=21.8454
C=46.9113
t=.6
と計算されました.
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