■ラマヌジャンが編み出した数学上の技巧(その9)

[Q]1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・+1/n^2<1を証明せよ.

 Σ1/n^2=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6

の収束値を具体的に求めることはできなくとも,収束することは以下のようにして証明できます.

(証明)n次部分和をPnとすると,

Pn=1/1^2+1/2^2+1/3^2+・・・+1/n^2

<1+1/1・2+1/2・3+・・・+1/(n−1)・n=2−1/n

<2

より,単調増加数列{Pn}は有界でn→∞のとき収束することがわかります.

 なお,級数Σ1/n(n+1)は,優雅な公式Σ1/n^2=π^2/6に表面的にはよく類似していますが,

 Σ1/n(n+1)

=Σ(1/n−1/(n+1))

=(1−1/2)+(1/2−1/3)+(1/3−1/4)+・・・

=1

となり,両者の間には大きな格調の差があるという有名な例になっています.

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[Q]1+1/√2+1/√3+1/√4+・・・+1/√n<2√n

を証明せよ.

[A]1/√n<2(√n−√(n−1))=2/(√n+√(n−1))

を数学的帰納法で証明すればよい.

[Q]1+1/√2+1/√3+1/√4+・・・+1/√n>2(√(n+1)−1)

を証明せよ.

[A]1/√n>2(√(n+1)−√n)=2/(√(n+1)+√n)

を数学的帰納法で証明すればよい.

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[1]ゼータ関数の無理数性

 積分

  I=∫(0,1)∫(0,1)1/(1−xy)dxdy/√xy

において,1/(1−xy)を幾何級数として展開し,項別積分すると

  I=Σ1/(n+1/2)^2

 このとき,

  1+1/3^2+1/5^2+1/7^2+・・・

の値が必要になりますが,この値はζ(2)=Σ1/n^2から次のようにして求まります.

  1+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・

 =(1+1/2^2+1/4^2+・・・)(1+1/3^2+1/5^2+・・・)

 =1/(1−1/4)・(1+1/3^2+1/5^2+・・・)

分母を奇数のベキ乗だけにすると一般式は

  {1-2^(ーs)}ζ(s)

となるのです.したがって,

  ∫(0,1)∫(0,1)1/(1−xy)dxdy/√xy=(4−1)ζ(2)

 さらにζ(3)は,c:0<x<y<z<1として

  ζ(3)=∫(c)dxdydz/(1−x)yz

 このように,s≧2のすべての整数でのζ(s)値は周期になることがわかっていますが,1979年,ボイカーズは周期積分の原理を用いた証明を見つけました.ボイカーズはアペリの論じている考えを土台にして,

  |anζ(3)−bn|<α^(-n)

を導き出したのです.

 さらに一歩進んで,数列{an}と{bn}に,重さ2となる保型形式的解釈を与えることによる証明もあるようです.エレガントな証明ですが,解説するには荷が重い・・・生兵法はけがのもと.

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 ζ(1)が発散することはオレームが,オイラーはζ(2)=π^2/6を証明した.すべての偶数sに対しζ(s)の値は無理数であるが,アペリは1979年にζ(3)が無理数であることを証明した.

  1+1/8+1/27+1/64+・・・・≠p/q

 ボイカーズ(ブーケルス)はアペリとはまったく違うアイデアを使って独自の証明を打ち出した.

 その後,2000年にリボールが無限個の奇数sに対しζ(s)が無理数であることを証明した.

 2001年にリボールはこの結果を精密化し,ζ(5)からζ(21)までの奇数sのうち少なくとも1つのsについて無理数であることを証明した.

 同年,ロシアの数学者,ズディリンはこの範囲をζ(5)からζ(11)までに狭めることに成功した.

[1]sを1より大きい奇数とすると,ζ(s+2),ζ(s+4),・・・,ζ(8s−3),ζ(8s−1)の各集合は,少なくとも1個の無理数を含む.

[2]s=3のとき,ζ(5),ζ(7),ζ(9),ζ(11)の少なくともひとつは無理数である.

 いまはさらに前に進んで切ることを期待したいが,昨年末,ζ(5)の無理性が証明されたようだというニュースが飛び込んできた.その論文は,ボイカーズによるζ(3)の無理数性の証明を一般化したものであったが,その後なしのつぶてである.

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[Q]1>x>y>0のとき,(x−y)/(1−xy)<1

を証明せよ.

[A]1−xy>0より,x−y<1−xyを示せばよい.

  1−xy−x+y=(1−x)(1+y)>0

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