■2項定理の近似式

【1】72の法則

 たとえば,年率rの複利計算の公式は

  P=P0(1+r)^n,P0:元金,r:年率,n:年数

となる.P=2P0(元金の2倍)とすると,

  2=(1+r)^n

  log2=nlog(1+r)

  n=log2/log(1+r)

 r=0.06の場合,n=11.9≒12となるが,

  n≒72/r

で近似されるという近似式が「72の法則」である.

 年率がr=0.0785のとき

  n≒72/r

の近似値は正確な値と一致する.

 近似値であるから必ずしも正確ではないが,

   r    n=log2/log(1+r)  n≒72/r

  0.04   17.67            18

  0.06   11.9             12

  0.08   9.01              9

と違いは小さく,簡単で便利な近似法則になっていることがわかる.

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【2】ボンフェローニの不等式

 検定の多重性とは有意水準αでn回のt検定を繰り返し行なうと推論全体の有意水準がαより増加し1−(1−α)^n に増加してしまうことを指しています.例えば,αを0.05としてもn=3では0.12、n=10では0.40のようにnが増加すれば有意水準はどんどん増加してしまいます.

 このように,どこの2群に差があるか答えるために,個々の検定をよく知られているt検定を利用し有意水準αで繰り返し行なうと全体として多大な偽陽性を生じることは明白です.

 そのための簡便な多重検定方式として,ボンフェローニの不等式に基づく方法があります.この方法は比較する組み合わせの数によって有意点の設定を変えるもので,興味のある対比数をhとすると,1回の検定が有意水準(実質的有意水準)α/hで有意ならば推論全体での有意水準(名目的有意水準)100α%で有意差ありと判定します.

 1回の検定の有意水準をα0とすると,h回の検定を繰り返すことによって生じる推論全体での有意水準をαに保つには,

  α=1−(1−α0 )^h

より

  α0 =1−(1−α)1/h≒α/h

と求められることがその根拠となっています。

 α/h(ボンフェローニ法)に対して,1−(1−α)1/hを用いるのがシダック法です.α=0.05として,h=3,h=10の場合で,ボンフェローニ法とシダック法のα0を比較してみると,

   h    α0 =1−(1−α)1/h      α0≒α/h

   3      0,017          0,017

  10      0.005          0.005

と違いは小さく,簡単で便利な近似法則になっていることがわかります.

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