■ハードマテリアルの構築学(その5)

【1】三角形分割

 ビルや窓など私たちの身の回りにある人工物は,多くの場合,垂直な線と水平な線,則ち長方形から作られている様に見える.しかし,構造物を安定にしているのは長方形ではなく三角形である.

 三角形は角の圧力を加えられても変形しない唯一の形である.大型の人工物は安定性が重要となるから,長方形の中に1本の対角線を加えることで,構造を2つの三角形に変えている.その構造がよくわかる代表が鉄塔や橋脚のトラス構造である.

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【2】ソフトマテリアルとの比較

 正多角形は無限に多く存在するが,それでは,

[Q]互いに合同な正多角形を隙間も重なりもないように並べて平面を完全に埋める仕方が何通りあるだろうか?

[A]この問題は昔から知られていて,それが3種類に限ることは以下のようにして証明される.

 正多角形の中で平面をタイル張りのように隙間なく埋めつくすことができる平面充填形では,各頂点に正p角形がq面が会するとすると,正p角形の一つの内角は2(1−2/p)×90°であり,一つの頂点の回りの内角の和はこれがq個集まって四直角であるから,

  2q(1−2/p)=4,すなわち,

  1/p+1/q=1/2   (p,q≧3)

で,この条件を満たす(p,q)の組は(3,6),(4,4),(6,3)の3通りしかない.

 したがって,平面充填形は正三角形,正方形,正六角形の3つだけで,このうち正方形のは碁盤,正六角形のは蜂の巣などでおなじみであろう.

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 ハードマテリアルでは幾何学的安定性を三角形構造に求めているのに対して,ソフトマテリアルでは六角形構造に求めている.

 これまでの議論をまとめておきたい.

  ハードマテリアル   ソフトマテリアル

    剛性優先       柔軟性優先

    三角形構造      六角形構造

    n+1面体      2(2^n−1)面体

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