■フェルマーの最終定理と有限体(その11)
今回のコラムでは
[参]中島匠一「数を数えてみよう」日本評論社
から題材をとって,有限体上のフェルマー曲線について調べてみることにしました.とはいってもすべてのnについて計算することはできませんから,
x^3+y^3=z^3
に限定することになるのですが,そこでは解の存在より解の個数の方が問題になるのです.
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【1】x^3+y^3=z^3 on Fp
n=3の場合はオイラー(1770年)によって自然数解をもたないという証明が与えられましたが,今度は同じことを有限体について考えてみます.
p=5では
x |0,1,2,3,4
x^3|0,1,3,2,4
となり,任意のaに対してx^3=aを満たすxが存在することがわかります.
n=3では
(p−x)^3=x^3 (modp)
が成り立たないので,半数が3乗剰余ということは保証されておらず,このように全数が3乗剰余ということもあり得るのです.
この場合,
x\y 0 1 2 3 4
0 (0,0,0) (0,1,1) (0,2,2) (0,3,3) (0,4,4)
1 (1,0,1) (1,1,3) (1,2,4) (1,3,2) (1,4,1)
2 (2,0,2) (2,1,4) (2,2,1) (2,3,0) (2,4,3)
3 (3,0,3) (3,1,2) (3,2,0) (3,3,4) (3,4,1)
4 (4,0,4) (4,1,0) (4,2,3) (4,3,1) (4,4,2)
となって,(0,0,0)を除いた24個の解で4個ずつ組になりますから
N5=24/4=6=5+1
p=7では
x |0,1,2,3,4,5,6
x^3|0,1,1,6,1,6,6
となって,x^3=aを満たすF5の元xの個数を求めると,a=0なら1個,a=1,6なら3個,a=2,3,4,5なら0個となります.
x\y 0 1 2 3 4 5 6
0 (0,0,0) (0,1,1) (0,2,1) (0,3,3) (0,4,1) (0,5,3) (0,6,3)
(0,1,2) (0,2,2) (0,3,5) (0,4,2) (0,5,5) (0,6,5)
(0,1,4) (0,2,4) (0,3,6) (0,4,4) (0,5,6) (0,6,6)
1 (1,0,1) (1,3,0) (1,5,0) (1,6,0)
(1,0,2)
(1,0,4)
2 (2,0,1) (2,3,0) (2,5,0) (2,6,0)
(2,0,2)
(2,0,4)
3 (3,0,3) (3,1,0) (3,4,0)
(3,0,5)
(3,0,6)
4 (4,0,1) (4,3,0) (4,5,0) (4,6,0)
(4,0,2)
(4,0,4)
5 (5,0,3) (5,1,0) (5,2,0) (5,4,0)
(5,0,5)
(5,0,6)
6 (6,0,1) (6,1,0) (6,2,0) (6,4,0)
(6,0,5)
(6,0,6)
(0,0,0)を除いた54個の解で6個ずつ組になりますから
N7=54/6=9≠7+1
となって,Np=p+1が成り立ちません.
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p=5とp=7で答えのパターンが違っていましたが,一般の素数pに対しては解の数はどのようになるのでしょうか? 他の場合も調べてみると
p Np p+1
2 3 ○
3 4 ○
5 6 ○
7 9 ×
11 12 ○
13 9 ×
17 18 ○
19 27 ×
この表より,pを3で割った余りが注目されます.
1)3で割り切れる素数は3しかなく,N3=4である.
2)p=2(mod3)の場合,Np=p+1が成り立つ.
→じつはp=3(mod2)の場合,3乗で表される数x^3=aはただひとつの解をもち,このことからすんなりNp=p+1が証明される.
3)p=1(mod3)の場合,Npは複雑である.
4)すべての素数についてNp≧3である.
→3個の解は(0,1,1),(1,0,1),(1,p−1,0)で,等号はp=2の場合に限る.
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