■フェルマーの最終定理と有限体(その10)
驚かれるかもしれないが,リーマン予想は合同ゼータ関数に限ればすでに証明されている.abc予想やアルティンの原始根予想もその関数体版に限ればすでに証明されている.
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『x^n+y^n=z^nはn≧3のとき正の整数解をもたない.』というのが有名なフェルマー・ワイルズの定理(1994年)です.ワイルズはちょうど40才のときにフェルマーの最終定理を証明し,世界一有名な数学の未解決問題を解決しました.
ワイルズはフェルマーの定理の証明が一筋縄ではいかないことを実感して一時棚上げにしていたのですが,フライとリベットの結果にフェルマー攻略への道を確信し,研究室に7年間もこもって,彼独自のアイデアをもってとうとう証明に成功しました.この間の苦節7年には大いなる勇気,確固たる意志,強靭な忍耐力,広範な知識,ずば抜けた戦略,そして幸運を必要としたことは間違いありません.
しかし,これが解をもつといったら驚かれるかもしれませんね.もちろんこれは架空の話ではありますが,modpの世界,すなわち,
Fp={0,1,,・・・,p−2,p−1}
なる有限体上で考えてみると実際に解をもちます.
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【1】有限射影平面
フェルマーの問題:x^n+y^n=z^nを有限体Fp上で考えてみましょう.ただし,(x,y,z)=(0,0,0)は除外することにします.
また,(x,y,z)が解ならば(tx,ty,tz)も解なので,
(x,y,z)=(2x,2y,2z)=・・・=((p-1)x,(p-1)y,(p-1)z)
よりp−1個の点は同じ点とみなすことができます.
すなわち,有限射影平面P^2(Fp)で考えることになるのですが,有限射影平面についてはコラム「群と魔方陣」「球の充填と格子」でも説明したとおりですので省略します.また,解の個数イコール
{(x,y,z)|x^n+y^n=z^n,x,y,zはFpに属する}
をみたすP^2(Fp)の点の個数をNpと書くことにします.
[1]フェルマーの問題はn=1のときにはx+y=zという単なる足し算ですから,xとyにどんな自然数を入れても自然数zは必ず存在します.この問題を有限体Fp上で考えるとxはp通り,yもp通りでzは必ず存在しますから,全部でp^2通り,それから(0,0,0)を除いてp^2−1通り.同じものがp−1組ありますから,
Np=(p^2−1)/(p−1)=p+1
が答えになります.
[2]n=2の場合はピタゴラス方程式x^2+y^2=z^2と呼ばれ,無数の解をもち,しかもすべての解をもれなく求めることのできる公式も知られています.
有限体上で考えると,p=5では
x |0,1,2,3,4
x^2|0,1,4,4,1
ですから
x\y 0 1 2 3 4
0 (0,0,0) (0,1,1) (0,2,2) (0,3,2) (0,4,1)
(0,1,4) (0,2,3) (0,3,3) (0,4,4)
1 (1,0,1) (1,2,0) (1,3,0)
(1,0,4)
2 (2,0,2) (2,1,0) (2,4,0)
(2,0,3)
3 (3,0,2) (3,1,0) (3,4,0)
(3,0,3)
4 (4,0,1) (4,2,0) (4,3,0)
(4,0,4)
(0,0,0)を除いた24個の解で,たとえば,
(1,2,4)=(2,4,3)=(3,1,2)=(4,3,1)
は同じ点とみなすことができるわけですから,4個ずつ組になり
N5=24/4=6=5+1
p=7では
x |0,1,2,3,4,5,6
x^2|0,1,4,2,2,4,1
より
x\y 0 1 2 3 4 5 6
0 (0,0,0) (0,1,1) (0,2,2) (0,3,3) (0,4,3) (0,5,2) (0,6,1)
(0,1,6) (0,2,5) (0,3,4) (0,4,4) (0,5,5) (0,6,6)
1 (1,0,1) (1,1,3) (6,1,3)
(1,0,6) (1,1,4) (6,1,4)
2 (2,0,2) (2,2,1) (2,5,1)
(2,0,5) (2,2,6) (2,5,6)
3 (3,0,3) (3,3,2) (3,4,2)
(3,0,4) (3,3,5) (3,4,5)
4 (4,0,3) (4,3,2) (4,4,2)
(4,0,4) (4,3,5) (4,4,5)
5 (5,0,2) (5,2,1) (5,5,1)
(5,0,5) (5,2,6) (5,5,6)
6 (6,0,1) (6,1,3) (6,6,3)
(6,0,6) (6,1,4) (6,6,4)
(0,0,0)を除いた48個の解で6個ずつ組になりますから
N7=48/6=8=7+1
どちらも
Np=p+1
となりましたが,任意のpにおいてこれが成り立つことは
x^2=a (modp)
においては
(p−x)^2=x^2 (modp)
より,{1,2,・・・,(p−1)/2}の各平方と{p−1,p−2,・・・,(p+1)/2}の各平方が合同となり,したがって半数が平方剰余,残りの半数が平方非剰余になることから理解されます.
また,
x^2|0,1,4,4,1
x^2|0,1,4,2,2,4,1
のように最初の0を除いた部分は回文(前から読んでも後から読んでも同じ)になっているという事実もこのことから理解されるでしょう.
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