■ピタゴラス三角形とアイゼンシュタイン三角形(その5)
数論においてはどのような整数が2次形式で表現されるかというのは基本的な問題のひとつです.
今回のコラムでは,2平方和定理,3平方和定理,4平方和定理の中で最も知られていない,3元2次形式に関するルジャンドルの定理「正整数nが3つの平方数の和として表せる←→4^m(8k+7)の形をした数ではない.」を取り上げてみます.
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【1】3平方和の定理(ルジャンドル,1798年)
「正整数nが3つの平方数の和として表せる←→4^m(8k+7)の形をした数ではない.」
n≠4^m(8k+7)はnが高々3個の平方数で表されるための必要十分条件です.ガウスの定理ともルジャンドルの定理とも呼ばれますが,ルジャンドルは2次形式ax^2+by^2+cz^2の研究を通して,より一般的な3元2次形式論としてこの結果を得ています.
[参]フェルマー・オイラーの定理(2平方和定理)
m=4k+3の形をした数は2つの平方数の和になりません.mの素因数分解におけるp=4k+3の形のすべての素因数の指数が偶数であるときに限り,2つの平方数の和の形に表すことができるのです.
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【2】ガウスの定理
「どの正整数も3つの3角数の和として表される.」
ガウスは1796年の日記に「わかった! n=△+△+△」と書いていますが,それはすべての整数は3つの3角数の和によって表しうるという意味です.ガウスの発見は8n+3の形をしたすべての整数を3つの奇数の平方の和として表せることを意味していて,3平方和定理「8n+7の形の自然数は3つの平方数の和では表せない」を用いると「n=△+△+△」を簡単に示すことができます.
(証明)4^m(8k+7)でない奇数は3平方和で表せますから,任意の自然数nに対して8n+3=x^2+y^2+z^2と書けます.このとき,x=2p+1,y=2q+1,z=2r+1とおくと
n=p(p+1)/2+q(q+1)/2+r(r+1)/2
一般に「m角数定理」とは「すべての自然数はたかだかm個のm角数で表せる」というものです.この定理でm=3の場合がガウスの定理「n=△+△+△」,m=4の場合がラグランジュの定理「n=□+□+□+□」に相当します.m=5の場合が五角数定理「n=☆+☆+☆+☆+☆」の相当するわけですが,フェルマーが遺して後世を悩ましていたこの命題は,オイラー,ラグランジュ,ルジャンドルなどの研究を経て,1813年,コーシーが証明しセンセーションを巻き起こしました.ガウスはフェルマーの主張のひとつを証明したことになります.
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