■追跡曲線(その31)
(その27)〜(その30)は
[Q]正n角形の4つの頂点の1匹ずつ犬がいる.それぞれ,同じ速さで隣の犬を追いかけたとする.それぞれの犬はいつも前方にいる犬に向かって同じスピードで進む.n匹の犬を結ぶ図形は回転しながら次第に小さくなる正n角形になり,元の正n角形の中心で出会うことになる.このとき犬のたどる軌跡は?
の答えが,
[A]等角らせん: r=aexp(−bθ)
であることを知っていたとしても,簡単には答えを導き出せないことを示すために掲げた記事である.
対数らせんは,
r=a^θ,dr/dθ=a^θloga
であるから,
dr/dθ|θ=0=loga (定数)
すなわち,中心角θが一致の角度進む毎に中心からの距離rの値が一定倍になるのであれば,おおよそ対数らせんとなる渦巻きを描くのである.
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この問題が解決に向けて動きだしたのは,一般に与えられた三角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの三角形の面積の
M=3k^2−3k+1=3(k−1/2)^2+1/4
倍になる.同じく,四角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った四角形の面積は,もとの四角形の面積の
M=2k^2−2k+1=2(k−1/2)^2+1/2
倍になることに気づいたときからであった.
1辺の長さが1の正n角形を考える.その面積は
S=n/4・cot(π/n)
また,隣接する2辺とその弦からなる三角形の面積は
S0=1/2・sin(2π/n)=sin(π/n)cos(π/n)
m=S0/S=4/n・(sin(π/n))^2
mn=4・(sin(π/n))^2
長くなるので計算を割愛するが,(→詳細は(その19)を参照されたい)
dr/dθ|k=1=√(mn/(4−mn))=tan(π/n) (定数)であることから,追跡曲線の軌跡が対数らせんとなることがわかる.
したがって,対数らせんの方程式をr=a^θとした場合,
a=exp(tan(π/n))
r=aexpbθとした場合は,
b=√(mn/(4−mn))=tan(π/n)
で与えられる.
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また,等角らせんは動径をいつも一定の角度で横切るという特徴がある.
r=aexpbθ
とした場合,動径ベクトルと速度ベクトルのなす角は
cosφ=b/(b^2+1)^1/2
であるから,φはθによらず一定である.
cosφ=b/(b^2+1)^1/2
(cosφ)^2=b^2/(b^2+1)
b=cotφ → φ=π/2−π/n
になる.
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次に,追跡曲線の弧長Lであるが,
L=∫(0,∞)(r^2+(dr/dθ)^2)^1/2dθ
=∫(0,∞)aexp(−bθ)(1+b^2)^1/2dθ
=[−aexp(−bθ)/b・(1+b^2)^1/2]
=a/b・(1+b^2)^1/2
と計算される.
r=aexp(−bθ)
において,
b=tan(π/n)
また,正n角形の1辺の長さを1,外接円の半径をRとすると
R=1/2sin(π/n)
であるが,a=Rである.これを代入すると
L=1/2(sin(π/n))^2
と求まる.
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「等角らせんを直線に沿って転がすと,等角らせんの原点は直線を描くが弧長は,原点を頂点とする直角三角形の斜辺の長さに等しい.」という性質があるが,この性質を使って,追跡曲線の長さLを計算してみると,
正n角形の1辺の長さを1,外接円の半径をRとする.
R=1/2sin(π/n)
L/R=1/cos(π/2−π/n)=1/sin(π/n)
L=R/sin(π/n)=1/2(sin(π/n))^2
と計算される.これは前述した結果と一致している.
すなわち,追跡曲線の長さLが辺の長さ1に等しくなるのは,n=4のときだけである.これは正方形の中心角が90°だからであって,正三角形ではL<1,正五角形ではL>1であることが理解される.
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