■tan1°は無理数か? (その6)
[Q]3√2=2^1/3は無理数であるか?
[A] 3√2=p/q (p,qは公約数をもたない)
と書けるとすると,
p^3=2q^3 → pは偶数でなければならない
p=2kと書けるとすると,
8k^3=2q^3 → 4k^3=q^3 → qは偶数でなければならない
p,qは公約数2をももつことになり矛盾.よって,3√2は無理数である.
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【1】既約多項式
有理数Qと無理数√2の四則演算を自由に組み合わせて作ることができる数全体の集合は
Q[√2]={a+b√2|a,bは有理数}
となるが,有理数Qと無理数3√2の四則演算を自由に組み合わせて作ることができる数全体の集合は
Q[3√2]={a+b3√2+c3√4|a,b,cは有理数}
である.√2とは違って,かけ算によって3√2・3√2=3√4がでてくるからである.
ところで,x^2−2,x^3−2はQ上の既約多項式である.
x^2−2=(ax−b)(cx−d)
と有理数係数の1次式の積として表されるならば,2つの有理数解をもつことになる.これは√2が無理数であるという事実に反する.
x^3−2=(ax−b)(cx^2+dx+e)
と有理数係数の1次式と2次式の積として表されるならば,有理数解b/aをもつことになる.これは3√2が無理数であるという事実に反する.
この論法が使えるのは3次以下の多項式の場合のみである.4次以上だと2次以上の式同士の積に表されるので,有理数解をもたなくでも既約多項式でない場合がある.
[例]x^4+x^2+1=(x^2+1)−x^2=(x^2+x+1)(x^2−x+1)
x^3−2がQ上の既約多項式であることから,Q[3√2]の元をa+b3√2+c3√4と表す表記法は一意であることがいえる.また,逆数も
1/(a+b3√2+c3√4)=d+e3√2+f3√4
の形に表すことができるのである.
[補]x^2−2=0のQ[√2]の解はx=±√2であるが,x^3−2=0のQ[3√2]の解はω=(−1+√−3)/2として,
{3√2,ω3√2,ω^23√2}
となる.
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【2】4√5=5^1/4は無理数である
√5が無理数であることは既知とする.
(4√5)^2=√5
より,もし4√5が有理数ならば,√5は有理数となるので矛盾.
無理数の有理数倍,無理数の逆数は無理数であるから
5^3/4=5/5^1/4 → 無理数
5^5/4=5・5^1/4 → 無理数
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【3】φ=(1+√5)/2=2cos36°は無理数である
xは無理数,a,b,c,dは有理数とする.このとき
y=(ax+b)/(cx+d)
は無理数である.なぜなら.yが有理数ならば
x=(dy−b)/(a−cy)
は有理数となり矛盾が生じる.これよりφは無理数である.
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【4】log102は無理数である
有理数,したがって
log102=p/q
と書けると仮定すると
qlog102=p→2^q=10^p=2^p・5^p
同じ数について2通りの素因数分解ができることになり矛盾.
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【5】α=√2+√3は無理数である
α−√2=√3
の両辺を2乗して,√2について解くと
√2=(α^2−1)/2α
αが有理数だと仮定すると,√2も有理数であることになり矛盾.
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【6】α=3√2+√2は無理数である
α−√2=3√2
の両辺を3乗して,√2について解くと
√2=(α^3+6α−2)/(3α^2+2)
αが有理数だと仮定すると,√2も有理数であることになり矛盾.
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