■追跡曲線(その9)
(その8)の考察を平行四辺形に当てはめるならば,(その2)(その3)(その5)の考察は誤りということになる.これらは(その4)で考えたようなタイプの回転する正方形の問題の解ではあっても,別問題
正方形の4つの頂点の1匹ずつ犬がいる.それぞれ,同じ速さで隣の犬を追いかけたとする.それぞれの犬はいつも前方にいる犬に向かって同じスピードで進む.4匹の犬を結ぶ図形は回転しながら次第に小さくなる正方形になり,元の正方形の中心で出会うことになる.
[Q]このとき犬のたどる軌跡は?
の解ではないのである.
今回のコラムではそれを訂正して掲載したい.
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一般に与えられた平行四辺形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った四角形の面積は,もとの平行四辺形の面積の
M=2k^2−2k+1=2(k−1/2)^2+1/2
倍になる.
k=1/3 → M=5/9
k=1/2 → M=1/2
k=2/3 → M=5/9
k=1 → M=1
k=3/2 → M=5/2
k=2 → M=5
となる.
0<k<1のときはもとの平行四辺形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもと平行四辺形より大きくなり,k=3/2のときには5/2倍になるが,与えられた平行四辺形の各辺を逆方向に延ばすと大きな平行四辺形の対辺を1:2に内分する点と交わるのである.
k=2の場合,拡大三角形の1辺の長さは√5になる.ここで,余弦定理
1^2=2^2+(√5)^2−2・2・√5cosα
cosα=2/√5
θがarccosα進む毎にrの値が√5倍になる→B=√5の1/arccosα乗
もし,r=aexpbθの形であれば
B=expb=√5の1/arccosα乗
b=1/2arccosαlog5
この結果は正方形・長方形に限らず,任意の平行四辺形に対して成り立つ.
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【1】まとめ
一般に与えられた三角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの三角形の面積の
M=3k^2−3k+1=3(k−1/2)^2+1/4
倍になる.
k=1/3 → M=1/3 (3等分)
k=1/2 → M=1/4 (4等分)
k=2/3 → M=1/3 (3等分)
k=1 → M=1
k=2 → M=7 (7等分)
となる.
0<k<1のときはもとの三角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの三角形より大きくなり,k=2のときには7倍になる.
同じく,四角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った四角形の面積は,もとの四角形の面積の
M=2k^2−2k+1=2(k−1/2)^2+1/2
倍になる.0<k<1のときはもとの四角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの四角形より大きくなり,k=3/2のときには5/2倍になる.
各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの図形の三角形小部分の面積のk(k−1)倍になるが,もとの三角形は3重に,もとの四角形は2重に数えられているので,それぞれ,
3k(k−1)+1
2k(k−1)+1
になるというわけである.
しかし,任意のn(≧5)角形では,与えられた図形に数えられない部分が生ずるので,同様の公式は存在しないことになる.
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