■ソフトマテリアルの構築学(その4)
ソフトマテリアルによる構築では安定性が重要になる.安定性とはリジッドな変形のしにくさがではなく,変形を食い止めるフレキシブルなメカニズムが働くことである.スローガン風に書けば,
ハードマテリアル←→「剛性」
ソフトマテリアル←→「剛性」よりも「柔軟性」
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【1】ハードマテリアルの構築原理
[1]2次元:e=2v−3
[2]3次元:e=3v−6
[3]n次元:e=nv−n(n+1)/2
で与えられる.
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【2】ソフトマテリアルの構築原理
ハードマテリアルの構築原理は定量的かつ確定的であるが,それに対して,ソフトマテリアルの構築原理は一義的には決まらず,統計的にしか扱えないことが多い.例をあげると
[1]面の数fはほぼ14をピークとする分布を示すことが認められている.たとえば,植物細胞についての観察結果では全体の74%が12〜16面であり,56%が13〜15面(平均13.96面)という値が得られている.また,金属ガラスの構造で最も多い面の数はf=14(〜35%),ついでf=15(〜25%)とf=13(〜20%)が続く.
オイラーの多面体定理を使うと
[1]2次元細胞の辺数の平均は≦6であり,すべての細胞が6辺以上の辺をもつことは不可能である
[2]3次元細胞の面数の平均は≦14であり,すべての細胞が14面以上の面をもつことは不可能である
ことが証明される.
[2]金属ガラスの構造で最も多い面の数はf=14(〜35%),ついでf=15(〜25%)とf=13(〜20%),面の形ではp=5(〜40%),次がp=6(〜30%),p=4(〜20%)と続く.面の数の平均値はおよそf=13.6,面あたりの辺の数の平均値はおよそp=5.12であるという.
など,平均値・最頻値などを使って要約されるのである.
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以下には,定性的でなくできるだけ定量的な結果を掲げてみたい.
[1]n次元空間充填では,各頂点の周りに少なくともn+1個の多面体が集まる(ルベーグ).
[2]n+1個のとき,ボロノイ細胞の面数は最大2(2^n−1)個で,安定な空間充填となる(コンウェイ).
切頂八面体は各頂点に4つの稜線が集まり,各稜線に3つの面を集める空間充填図形になるからである.切頂八面体の二面角は120°ではなく,各頂点に集まる稜線のなす角度も109.471°ではないが,面が曲面であれば泡が要求する120°と109.471°の条件を満たすことができる.
[1]1次元面のなす角:cosθ=−1/n
[2]2次元面のなす角:cosθ=−1/(n−1)
[3]n−2次元面のなす角:cosθ=−1/3,θ=109.471°
[4]n−1次元面のなす角:cosθ=−1/2,θ=120°
n次元空間充填2(2^n−1)面体は各頂点にn+1本の稜線が集まり,各稜線にn個の面を集める空間充填図形である.その二面角は120°ではないが,面が曲面であれば泡が要求する120°の条件を満たすことができる.120°は次元数nに関わらず,普遍的にみられる条件になっているのである.
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