■ハードマテリアルの構築学
n角形(n>3)の各頂点にハトメがついているとしたら,その多角形は容易に変形するのですが,それに対して三角形は実に頑丈で安定しています.多角形は筋交いを入れて三角形に分割する補強をしないと堅牢な構造にはなりません.
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【1】2次元骨組み
各頂点において力学的釣り合いが満たされなければならない.結論を先にいうと,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=2v−3
である.
2次元では
e≧2v−3
によって,剛体か否かの判別が行われるのであるが,e=2v−3を満たすにも関わらず剛体でない場合,棒材の組み替えによって,頂点の位置を動かさずに剛体に変換することができる.
3×3格子の場合の最少筋交い数は5である.6や7では多すぎ(冗長)だが,4では少なすぎ,すなわち筋交いを5から1カ所取り除くだけで構造物の剛性が損なわれてしまう.
[Q]一般に,n×m格子の最少筋交い数はいくつになるだろうか? また,筋交いをどこに配置すべきか?
[A]答えを先にいうと,最少筋交い数は
n+m−1
であり,それを越える場合はいくつかの筋交いを削除することが常に可能である.以下にその証明を掲載する.
[証]2次元骨組みにおいて,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=2v−3
である.
n×m格子の格子点数と辺数は
v=(n+1)(m+1)
e=n(m+1)+m(n+1)
したがって,不足している辺数は
2v−3−e=n+m−1
これを越える場合はいくつかの筋交いを削除することが常に可能である.
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【2】3次元骨組み
3次元の棒材・接点の空間骨組み(面には堅い板が使われていないものとする)ではどうだろうか?
一般に,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=3v−6
である.
たとえば,正四面体(v,e)=(4,6),正八面体(v,e)=(6,12),正二十面体(v,e)=(12,30)は剛体である.しかし,立方体(v,e)=(8,12)は剛体ではなく,あと6本の棒材を追加する必要がある.そして,立方体の6つの面の対角線に棒材を追加することで剛体構造にすることができる.正十二面体も剛性をもたない.
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【3】n次元骨組み
2次元骨組みにおいて,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=2v−3
3次元骨組みにおいて,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=3v−6
である.各頂点において力学的釣り合いが満たされなければならないからである.
n次元骨組みにおいて,v頂点をn次元空間に固定する場合,vこの頂点にはnvの自由度ある.
e=2v−3,e=3v−6
の2,3は次元数に等しい.
また,稜線がひとつ追加されるごとに自由度は1減る.自由度が0のとき,骨組みは固定されるので,nv個の稜線が必要と思われるかもしれないが,実際はn次元単体(三角形や四面体)は実に頑丈で安定している.その辺数と頂点数は
v=n+1,e=n(n+1)/2
になるから,
n(n+1)/2=n(n+1)−df
df=n(n+1)/2
となって,n次元単体の辺数分だけ少ない自由度で済むのである.
すなわち,
e=2v−3,e=3v−6
の3,6はその次元の単体の辺数に等しい.
以上より,任意の次元の骨組みにおいて,v頂点を抑え込むのに必要な最少の棒材数は
e=nv−n(n+1)/2
で与えられることになる.
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