■奇数ゼータの無理数性(その5)
アペリの論証は謎の二階漸化式から始まります.そして,一見すると関係なさそうな問題が,あっと驚く洞察によって,思いもよらない解き方に合体していくのです.
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アペリが行ったことは,より正確には,二階漸化式
(n+1)^3un+1=(34n^3+51n^2+27n+5)un-n^3un-1
を満たす2つの数列{an}{bn}を構成したことです.たとえば,
an=Σ(n,k)^2(n+k,k)^2
a0=1,a1=5,a2=73,a4=1445,a5=33001,・・・
bnに対する式も,より複雑ではありますが,同様に構成することができます.補助数列
c=Σ1/m^3+Σ(-1)^(m-1)/2m^3(m,n)(n+m,m)
を用いて
bn=Σ(n,k)^2(n+k,k)^2c
b0=0,b1=6,b2=351/4,b4=62531/36,b5=11424695/288,・・・
|bn/an−ζ(3)|<1/n^2
であるが,それよりもずっと速く収束する.漸化式
(n+1)^3un+1=(34n^3+51n^2+27n+5)un-n^3un-1
を満たすことからもっと正確にそれを計ると
|bn/an−ζ(3)|〜1/an^2
となるが,これは素数定理
π(n)〜n/lnn
匹敵する重要な結果である.
ここで,anの大きさは漸化式より,nが大きくなると
an+an-2=34an-1
に従うが,これより
an〜(17+12√2)^n=(1+√2)^4n
この漸化式を満たす任意の数列は,
Cα^(±n)/n^(3/2)
(α=17+12√2=(1+√2)^4はx^2−34x+1=0の根)
で指数的に増加(減少)することより,直ちに
bn/an → ζ(3)
が示されます.
このあとのアペリの証明には背理法が用いられています.ζ(3)が有理数だとする.約分した結果の分母をdとすると
e^3=20.08・・・,(1+√2)^4=33.97・・・
より,分母が
(e^3/(1+√2)^4)^n→0
すなわち,ζ(3)が有理数だとすると,1より小さい正の整数ができてしまう(矛盾).
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【1】まとめ
アペリの証明の要所は
|bn/an−ζ(3)|〜1/an^2
を使ったところにある.
無理数の有理数近似(ディオファントス近似)
|α−a/b|<1/λb^2
を参照されたい.
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