■フルヴィッツ・ボレルの定理

   |α−a/b|<1/√5b^2

を満たす有理数a/bは無限に多く存在する.一方,λ>√5に対しても

   |α−a/b|<1/λb^2

を満たす有理数a/bが有限個しかない無理数αが存在する.

  λ=[1:1,1,1,・・・]+[0:1,1,1,・・・]=φ+1/φ=√5

 すべての無理数のなかで,最も有理近似を嫌う数は黄金比

  φ=(1+√5)/2=[1:1,1,1,・・・]

である.

 この定数√5は最良のもので,これより大きな数に置き換えることはできないが,黄金比φのようにαの連分数展開が有限個を除いてすべて1になる無理数

  α=[a0:a1,a2,・・・,ar,1,1,1,・・・]

を除外すれば,√5の代わりに√8を用いても成り立つ.

  λ=[2:2,2,2,・・・]+[0:2,2,2,・・・]=1+√2+1/(1+√2)=√8

  |α−a/b|<1/√8b^2

 次に問題になるのは

  √2=[1:2,2,2,・・・]

  1+√2=[2:2,2,2,・・・]

のようなαの連分数展開が有限個を除いてすべて2になる無理数で,それを除くと定理を

  λ=[2:2,1,1,2,2,1,1,・・・]+[0:1,1,2,2,2,1,1,2,2,・・・]=(9+√221)/10+(−9+√221)/10=√(221/25)

  |α−a/b|<1/√(221/25)b^2

に改良できる.

 同様の改良を続けていったときの定数√5,√8,√(221/25),・・・がラグランジュ数である.それらは

  √(9−4/m^2)

において,それぞれm=1,2,5とおいたものである.結果として得られる数は3に収束する.

   |α−a/b|<1/λb^2

のλは3より小さくすることはできない.

  m=1,2,5,13,29,34,89,169,194,233,433,610,985,・・・

はマルコフ数と呼ばれる.

 マルコフ数は2次のディオファントス方程式

  x^2+y^2+z^2=3xyz

の解として現れる.大いに興味をかき立ててきたディオファントス方程式である.たとえば(x,y,z)=(1,1,1),(2,1,1),(5,1,2),(13,1,5),(29,5,2),・・・

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【1】ラグランジュ・スペクトル

  {√5,√8,√(221)/5,√(1517)/13,・・・}

そして,これらに対応する数とつきあわせると

  √5→(−1+√5)/2=[0:1,1,1,・・・]

  √8→(−1+√2)=[0:2,2,2,・・・]

  √(221)/5→(−9+√221)/14=[0:2,2,1,1,・・・]

  √(1517)/13→(−23+√1517)/38=[0:2,2,1,1,1,1,・・・]

[1](−1+√5)/2以外のすべての無理数αに対して,λ>√5として,

   |α−a/b|<1/λb^2

となる有理数a/bが無限個存在する.

[2](−1+√5)/2と(−1+√2)以外のすべての無理数αに対して,λ>√8として,

   |α−a/b|<1/λb^2

となる有理数a/bが無限個存在する.

[3](−1+√5)/2と(−1+√2)と(−9+√221)/14以外のすべての無理数αに対して,λ>√(221)/5として,

   |α−a/b|<1/λb^2

となる有理数a/bが無限個存在する.

[4](−1+√5)/2と(−1+√2)と(−9+√221)/14と(−23+√1517)/38以外のすべての無理数αに対して,λ>√(1517)/13として,

   |α−a/b|<1/λb^2

となる有理数a/bが無限個存在する.

 マルコフ数の謎について,さらに続けるならば

  √(7865)/29→[0:2,2,2,2,1,1,・・・]

  √(2600)/17→[0:2,2,1,1,1,1,1,1,・・・]

  √(78285)/89→[0:2,2,1,1,1,1,1,1,1,1,・・・]

  √(257045)/169→[0:2,2,2,2,2,2,1,1,・・・]

  √(84680)/97→[0:2,2,1,1,2,2,1,1,1,1,・・・]

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【2】マルコフ・スペクトル

  {1,2,5,13,29,34,・・・}

 √5≦x<3として,ここにはスべクトルの成分が可算無限個含まれている.この数列の一般項は

  x^2+y^2+z^2=3xyzの正の整数解のうち,最も大きいものをmとした場合,

  √(9−4/m^2)

となる.

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 αが2次の無理数でないとき,λ≧3となる.3≦x<θは,いま盛んに研究されている領域で,いくつかの成果を掲げると

[1]θ=(253589820+283748√462)/491993569(フライマン定数)

[2]λ=3のとき,可算無限個のαがある.

[3]√12<λ<√13,√13<λ<(65+9√3)/22のとき,αは存在しない.α=(−1+√13)/2のときだけλ=√13.λ=√12については不可算無限個のαがある.

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