■ヒーウッドの公式の別表現

 ヒーウッドはg個の穴があいたトーラス上の地図に関するオイラーの公式

  v−e+f=2−2g

を利用して

(1)2個の穴があいているトーラス上の地図はどれも8色で塗り分けられる

(2)3個の穴があいているトーラス上の地図はどれも9色で塗り分けられる

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(3)10個の穴があいているトーラス上の地図はどれも14色で塗り分けられる

に引き続いて,

(4)g個の穴があいているトーラス上の地図はどれもH(g)色で塗り分けられる

  H(g)=[{7+√(1+48g)}/2]

を証明しました.

 [・]はガウス記号で,

  g:1,2,3, 4, 5, 6, 7, 8, 9,10

  H:7,8,9,10,11,12,12,13,13,14

となるのですが,しかし,ヒーウッドはg≧2に対してそのような地図が実在することを示すことはできませんでした.そのため,この問題は「ヒーウッド予想」と呼ばれることになりました.

 1968年,リンゲルとヤングスは,g個の穴のあいているトーラス上にこれだけの色を必要とする地図が存在することを証明したのですが,ヒーウッド予想(1890年)が最終的に証明されるまでには77年もの歳月が必要だったというわけです.

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【1】ヒーウッドの公式

 ここでのテーマは,種数gの閉曲面上の地図の彩色数に関するヒーウッドの公式(必要条件)の導出です.

 ヒーウッドの公式

  H(g)=[{7+√(1+48g)}/2]  [・]は切り捨て関数

は√gのオーダーになっていて,2次不等式

  x^2−7x+12(1−g)≧0

の解となっていることが見てとれます.皮肉なことにg=0を代入するとx≧4になりますが,これはもちろん「四色問題の解」ではありません.

 ヒーウッドの公式はたいていの2次閉曲面について正しい彩色数を与えますが,クラインの瓶(g=0,向き付け不能)だけは6色必要であるという例外です.本来のトーラス(g=0)も隣接する領域が6個ある場合が例外で,それがなければ6色で彩色可能といった事実が知られているそうです.なお,十分性のリンゲルとヤングスの研究は単行本になって出版されておりますが,非常に多くの場合分けしてひとつひとつ調べるという手法だそうです.

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【2】ヒーウッドの公式の別表現

  H(g)=[{7+√(1+48g)}/2]

  H(χ)=[{7+√(49−24χ)}/2]

と同値です.

 面上の多角形分割で,面数F,頂点数V,辺数Eとするとき,オイラー標数

  χ=F+V−E

の閉曲面(向きづけられるか否かは不問)上の地図は,辺で境される国を別の色で塗るという条件下において,ヒーウッドの数

  H(χ)=[{7+√(49−24χ)}/2]  ([・]は切り捨て)

色あれば塗り分けられる(十分条件).

[注1]この公式は本来χ<0の場合にのみ有効である.ただし結果的にχ=1(射影平面)とχ=0で向きづけられる曲面(輪環面)では必要十分な正しい値(それぞれ6と7)を与える.χ=2(球面)のときには4を与えるが,これは「偶然の一致」であって四色問題の解ではない(∵上の公式を導くときχ<0という条件を本質的に使っている).

[注2]これは十分条件であって,必要条件(どうしてもそれだけの色がいる)ではない.結果的にはχ=0で向きづけられない曲面(クラインの瓶)以外の曲面ではすべて正しく必要十分な色数を与えている.クラインの瓶は唯一の例外で公式の値は7だが,実は6色で必要十分である.必要性は部分的(χの特別な値の例)には19世紀末から知られていたが,最終的にはヤングスとリンゲルとが共同研究して1968年に完全に証明された.

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【3】ヒーウッドの公式の別表現(その2)

 連結数をhとした場合の彩色数は

  H(h)=[{7+√(24h−23)}/2]

で与えられる.

 h=2,3に対してはこの公式使えないはずであるが,それでも正しい値H(2)=6,H(3)=7を与える.しかし,H(1)=4となって,6は得られない.

  h:1,2,3,4,5,6,7, 8, 9,10,11,12,13

  H:4,6,7,7,8,9,9,10,10,10,11,11,12

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【4】直観的に明らかな定理

 4色問題のように,直観的には明らかであるが,厳密に証明しようとすると難しいという定理を紹介しよう.

[1]ジョルダンの曲線定理

 2重点をもたないひとつの閉曲線は,平面を2つの部分に分ける.

[2]3次元の等周定理

 与えられた表面積をもつすべての曲面の中で,球が最大の体積をもつ.

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