■安定した最も疎な球配置(その3)

 プラトンの空間充填,アルキメデスの空間充填を表現するもうひとつの方法として,それぞれの頂点を円同士が接するような同一半径の円で置き換える方法がある.

 しかし,プラトン立体,アルキメデス立体が正12角形をもつことは不可能で,正10角形が最大正多角形となる.しかし,正10角形を有する切頂12面体や大菱形12・20面体は5回回転対称性を示し,空間充填は不可能である.

 次に,正8角形をもつ切頂立方体や大菱形立方八面体がその候補として考えられるかもしれないが,実際はダイヤモンド格子よりも安定した最も疎な球配置が存在するのである.

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【1】安定した最も疎な球配置

 同じ大きさの球を互いに他の4つずつと接し,球の中心が正四面体の4つの頂点をなすように空間内に配置する.つぎに,各球を接点を保ったまま互いに接する小さい4つの同じ大きさの球に置き換える.こうして得られる小さい球による球配置は各球が隣り合う4つの球に挟まれているという意味で安定している.

 安定した球配置ではどの球も4つの球と接しているから,それらの球の中心は正四面体の4つの頂点をなすことが推測される.しかし,正四面体状配置は決して最も疎な配置でなく,4つの球と接したままちょっと変形することによってはるかに疎な配置が得られる.菱形12面体格子の頂点に正四面体状配置がくるように変形させるのである(ヘーシュ,ラーベス).

 このようにして得られた球配置の密度dは,1辺の長さ2の正四面体の重心と頂点との距離は(3/2)^1/2となることから,

  R=((3/2)^1/2+1)r

  d/D=4・4/3・πr^3/4/3・πR^3=4r^3/R^3

  d=4/((3/2)^1/2+1)^3D=0.3633D

 また,正四面体状球配置の密度Dは

  D=√3/16・π=0.340

であるから,

  d=0.123

を得る.したがって,正四面体状球配置の密度Dよりもはるかに疎となる.

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