■帯の結び目を裏返す
立方体だって裏返すことができた.→コラム「エンドレス・キューブと平行多面体」
今回のコラムでは帯の結び目を裏返すことを考えてみたい.コラム「円筒とメビウスの帯を裏返す」の続編である.
[参]西山豊「数学を楽しむ」現代数学社
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【1】円筒を裏返す
1×Lの紙片からできたの円筒(直径L/π)とメビウスの帯を裏返すことが可能かどうかという問題について知られていることをまとめてみると,円筒が短くて広ければ可能,長くて細ければ不可能だが,その境界はどこにあるのだろうか?
[1]L>π+2ならば,円筒を裏返すことは可能である.
[2]L>πならば,(自己交差があってよければ)円筒を裏返すことは可能である.
[3]L<πならば,円筒を裏返すことは不可能である.
ここでは(円筒でなく)1辺の長さ1の四角筒(L=4)を考える.その作り方であるが,1辺が1の正方形を4個横に繋げる.正方形に対角線を引き,直角二等辺三角形16個に切り離す.それらをセロテープで繋げると,1辺の長さ1の四角筒ができる.この帯は裏返すことができるのである.
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【2】メビウスの帯を裏返す
1×Lの紙片を半回転させて(180°ひねって)両端をテープで貼り合わせるとメビウスの帯を作ることができる.メビウスの帯を中央に沿って切り開くと,2倍の長さのメビウスの帯が得られる.
L>λならば可能,L<λならば不可能となるその境界はどこにあるのだろうか?
[1]π/2(1.54)≦λ≦√3(1.73)であることがわかっている.
[2]L>π/2ならば,(自己交差があってよければ)メビウスの帯を裏返すことは可能である.
[3]L>√3ならば,メビウスの帯を裏返すことは可能であると予想されているが,その証明は易しくはない.
ここでは(メビウスの帯でなく)1辺の長さ1の2/√3の正六角形(L=9/√3)を考える.その作り方であるが,1辺が2/√3の正三角形を10個横に繋げる(1個は糊付けだけのためのもの).メビウスの帯は180°ひねって糊付けした帯であるが,540°ひねって糊付けすると正六角形ができる.180°の奇数倍ひねって糊付けした帯なので,表裏の区別のない帯になっているのだが,この正六角形の帯は裏返すことができる.
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【3】雑感
紙の帯(割り箸の袋)を結んで平たく押しつぶすことで,正五角形を作ることができる.対角線をイメージすると,正七角形や正九角形の結び目も作ることができる.同様に,2本の帯を使うと,正六角形,正八角形の結び目も作ることができる.これらも裏返すことができるだろうか?
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