■球の充填と格子(その2)
球の最密パッキングの研究は,2次形式の数論,ルート系,誤り訂正符号(応用代数学),有限単純群などの理論と関係し,最大の信頼性と最小の電力で伝送できる効率的な通信システムの設計に応用されています.
とくに,24次元リーチ格子:Λ24の発見により,データ転送における誤り訂正符号の発見に大革新がもたらされましたが,通信技術への応用は球の詰め込み問題の四次元以上への一般化の結果としてなされたものであり,純粋数学の期待せざる応用の一例といってもよいでしょう.
今回のコラムでは,
[参]一松信「現代に活かす初等幾何学入門」岩波書店
の助けを借りて,n=8,24の場合について最密充填を与える格子の構成法を略述しますが,8次元のE8格子の話の前に有限射影平面について説明しておきます.
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【1】有限射影平面
1本の直線上にn個の点があるアフィン平面をn次のアフィン平面と呼びます.有限アフィン平面Fq×Fqは
{(x,y)|ax+by=c,a,b,c,x,yはFqに属する}
で定義されるものです.n次のアフィン平面では1点を通る直線はn+1本で,n^2個の点がありますから,全部で
n^2(n+1)/n=n(n+1)
本の直線があります.
最も簡単な有限アフィン平面はZ2×Z2で,4個の点を四面体状に結んだものです.また,n次のアフィン平面上では平行な直線はn本あり,平行な直線同士を集めた組がn+1組あります.
アフィン平面では平行な直線が存在しましたが,しかし,すべての直線が交点をもつとしても矛盾を生じない幾何学の体系を考えることができます.アフィン平面に無限遠点,無限遠直線を加えて完備化すると射影平面が得られますが,完備化により点の数がn+1個,直線が1本増えます.したがって,n次射影平面における点の数はn^2+n+1,直線の数もn(n+1)+1=n^2+n+1で等しくなります.
これを
q=n^2+n+1
とおきますが,たとえば,2次の射影平面は7つの点,7本の直線よりなり,このことが射影平面の双対性と結びついてきます.
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最も簡単な射影平面は,有限体Z2上の2次元射影幾何であって,ファノ平面と呼ばれています.そして,7個の点p1〜p7を(1〜7)と略記することにして,例えば,7本の直線上の3点の組を(1,2,3),(1,4,5),(1,6,7),(2,4,6),(2,5,7),(3,4,7),(3,5,6)の7組の体系は射影幾何の公理系を満たすことになります.
そして,q行q列の行列A={aij}を
aij=1・・・直線liが点pjを通るとき
0・・・そうでないとき
と定めると,成分が0か1の行列を得ることができます.
[1,1,1,0,0,0,0]
[1,0,0,1,1,0,0]
[1,0,0,0,0,1,1]
A=[0,1,0,1,0,1,0]
[0,1,0,0,1,0,1]
[0,0,1,1,0,0,1]
[0,0,1,0,1,1,1]
この結合組の例では対称行列になりましたが,一般的には対称行列とはなりません.また,この行列では,各点は3本の直線に含まれるので,各行には1が3回現れます.また,各直線は3個の点を通るので,各列にはやはり1が3回現れます.そして,すべての成分が1である行列をJとすると,行列Aは
[3,1,1,1,1,1,1]
[1,3,1,1,1,1,1]
[1,1,3,1,1,1,1]
A’A=AA’=[1,1,1,3,1,1,1]
[1,1,1,1,3,1,1]
[1,1,1,1,1,3,1]
[1,1,1,1,1,1,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
AJ=JA=[3,3,3,3,3,3,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
[3,3,3,3,3,3,3]
となります.A’は直線と点を入れ替えた双対射影平面です.
ここでは2次の射影平面の場合でしたが,n次の射影平面の場合,対角成分はn+1となります.対角成分はpiを通る直線の数,非対角成分はpi,pjを通る直線の数を表しているというわけです.
射影幾何学の有名な定理:デザルグの定理やパップスの定理は有限射影平面でも成立します.なお,n=4k+1,4k+2の場合にn次の射影平面が存在すれば,
n=x^2+y^2
となる整数が存在するということも証明されています.このことからn=6,14,21,22,・・・の場合,n次の射影平面が存在しないことがわかります.
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【2】四元数と八元数
ところで,ハミルトンの四元数は乗法の交換法則を満たさない非可換体(斜体)
ab≠ba
ですが,非可換体においても射影平面を定義することができます.そして可換体ばかりでなく非可換体から作られる射影平面においてもこれらの定理が成立します.
さらに,乗法の結合法則を緩めればケイリーの八元数ができます.これはしばしば「ケイリー数体」と呼ばれますが,厳密にいうと体ではなく「体もどき」ということになります.
八元数は,実数単位e0と7個の虚数単位ei(i=1~7)による一次結合Σajejで表されますが,
e0ei=eie0=ei,ei^2=−1,eiej=−ejei
はよいとしても,
eiej=+ek・・・交換則
eiej=−ek・・・反交換則
の組合せは様々です.
また,結合法則に関しても
(eiej)ek=+ei(ejek)・・・結合則
(eiej)ek=−ei(ejek)・・・反結合則
の2つの場合があります.
(eiej)ek=+ei(ejek)・・・結合則
は(i,j,k)のなかに0(実数)が含まれるときと同一の番号があるときには常に成立しますが,(i,j,k)が1〜7のうちですべて異なるときは必ずしも成り立ちません.
そこで,前節に掲げた(i,j,k)=(1,2,3),(1,4,5),(1,6,7),(2,4,6),(2,5,7),(3,4,7),(3,5,6)の場合に結合法則を満たすものと決めます.この7組は3ビットの2進数で表し,各々のビットの排他的論理和をとると0になるので便利です.
(1,2,3)=(001,010,011)=0
(1,4,5)=(001,100,101)=0
(1,6,7)=(001,110,111)=0
(2,4,6)=(010,100,110)=0
(2,5,7)=(010,101,111)=0
(3,4,7)=(011,100,111)=0
(3,5,6)=(011,101,110)=0
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【3】ケイリー整数とE8格子
八元数Σajejにおいて,係数aj(j=0~7)が
1)整数値をとるもの
2)半整数値の奇数倍をとるもの
3)4個が整数値,4個が半整数値の奇数倍をとるもの
を加えて,「ケイリーの整数」と呼びます.
ただし,3)において整数である番号は(i,j,k)7組に0(実数)を加えた集合および(0〜7)に対するその補集合の14組に限ります.
このような点をすべてとると,8次元空間内で隣り合う2点間の距離がすべて1の格子ができあがります.原点に隣接する点は240個あり,それらと原点を結ぶベクトルが例外型リー環のE8ルート系を表すので,この格子をE8格子といいます.
E8格子にはほかにもいくつかの構成法があり,ここではケイリー整数との関連で説明しましたが,その配列は本質的にはこの形しかありません.S^7の上の240個の点は直交変換で互いに移りうる点の組を同じものとみなすと一意なのです.
そして,8次元空間において,2個の正軸体(正8面体の拡張)と1個の正単体(正4面体の拡張)を組み合わせると空間充填形ができるのですが,ケイリー整数の作る格子がその具体形になっています.
なお,E8格子において,原点からの距離が√nである格子点の個数は
240σ3(n)
(ここで,σ3(n)はnの約数の3乗の和)と表せることが知られています.すなわち,
n=1 → 240・1^3=240個
n=2 → 240・(1^3+2^3)=2160個
n=3 → 240・(1^3+3^3)=6720個
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【4】アイゼンシュタイン級数とE8格子
SL(2,Z)群上,最も単純な(基本的・古典的)保型形式は重さkのアイゼンシュタイン級数
Ek=1/2Σ1/(mz+n)^k
m,nは互いに素,kは整数4,6,8,・・・(4以上の偶数)
です.すなわち,アイゼンシュタイン級数は変換公式
Ek(az+b/cz+d)=(cz+d)^kEk(z)
c,dは互いに素
を満たすというわけです.
保型性の定義から
Ek(z+1)=Ek(z)
Ek(-1/z)=z^kEk(z)
はすぐわかりますが,前者は周期性,後者は双対性と理解することができます.
Ek(z+1)=Ek(z) (周期性)
Ek(-1/z)=z^kEk(z) (双対性)
この保型性の定義は周期性f(x+1)=f(x)を含むので,任意の保型形式はq=exp(2πiz)とするフーリエ展開のもち,
E4(z)=1+240Σσ3(n)q^n
E6(z)=1−504Σσ5(n)q^n
E8(z)=1+480Σσ7(n)q^n
E10(z)=1−264Σσ9(n)q^n
E12(z)=1+65520/691Σσ11(n)q^n
E14(z)=1−24Σσ13(n)q^n
・・・・・・・・・・・・・・・・
σk(n)はnの正の約数のk乗和
ベルヌーイ数を用いると
Ek(z)=1−2k/BkΣσk-1(n)q^n
また,ζ(1-k)=−Bk/kにより
Ek(z)=1−2/ζ(1-k)Σσk-1(n)q^n
とも表されます.これらはすべてのσk(n)を教えてくれる母関数であり,それが保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以です.
アイゼンシュタイン級数を用いると
Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24
=q-24q^2+252q^3-1472q^4+5483q^5+・・・
は
Δ(z)=1/1732(E4(z)^3-E6(z)^2)
と表されます.
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【5】ハミング符号系
E8格子の構成法は他にもありますが,ここでは24次元リーチ格子への準備として,E8格子の構成法に「符号理論」としての解釈を与えます.符号理論の基礎はまさしく現代数学であり,いまでは歩きながら携帯電話するにしても,現代数学の恩恵を受けているのです.
E8格子の格子点のうち,半整数の奇数倍を1,偶数倍を0で表すと,
b1b2b3b4b5b6b7b8 b1b2b3b4b5b6b7b8
00000000(0) 11111111(F)
00001111(1) 11110000(E)
00110011(2) 11001100(D)
00111100(3) 11000011(C)
01010101(4) 10101010(B)
01011010(5) 10100101(A)
01100110(6) 10011001(9)
01101001(7) 10010110(8)
の16パターンになります.右列は左列のビットを反転させたものです.
左からb1,b2,・・・とすると,b1b2b3b5の4ビットを2進数として読むと16進数(0〜F)を表すことができます.そして,互いに少なくとも4ビット異なりますから,4ビットの符号に4ビットの検査ビットをつけた8ビット符号系と解釈することができます.
このうちb4をパリティビット(1が偶数個になるように付加したビット)とみなすことができるのですが,これがハミング符号系の特別な場合で,一般に1ビットの誤りが完全に訂正できる符号系はm個の情報ビットと2^m−m−1個の検査ビットをもつ符号系です.
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【6】24次元リーチ格子
多くの符号系がガロア代数体から得られるのですが,パリティビットを加えて24ビットにした符号系を使用すると,3個までの誤りが訂正できる符号系ができあがります.
24ビット符号系を使用する場合,符号語12ビット+検査11ビット+パリティ1ビットですから,2^12=4096語を使用することができます.
1)符号語0に対しては全0
2)符号語1に対しては
000000000001|01000111011|1
この場合の検査ビットは,左からb10,b9,・・・,b1,b0とし,bkは素数11に対して平方剰余のとき1,平方非剰余のとき0とする.また,パリティビットは全体で1が8個となるようにする.
3)符号語2^k(k=1~10)に対しては,末尾のパリティビットはそのままにして,残りの23ビットをそれぞれ左にk-1桁巡回シフトとする.
4)左端が0の符号語(0~2047)に対しては,左側を2進数と考えて,3)で作った符号を各ビットごとに排他的論理和をとる.
5)左端が1の符号語m(2048~4095)に対しては,その補数4095-mに対して4)で作った符号の各ビットを反転させる.
このようにすると,全0と全1を除いた4094語の符号は1が8個,12個,16個のいずれかであり,相異なる2個の符号は少なくとも8ビットが異なるようにすることができます.
この考え方が24次元リーチ格子の場合にも有用となり,リーチは1967年に構成した極めて密な格子を構成しました.これがリーチ格子で,1969年,コンウェイはこれを利用して「コンウェイ群」と呼ばれる散発単純群を構成しています.これがさらに1973年,「モンスター」と命名・愛称された散在型有限単純群の誕生に結びつきました.
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【7】ラマヌジャン数とリーチ格子
以下では1/2,1/4などの分数を避けるために全体を8倍して成分をすべて整数としますが,これにより点間のノルムはすべて16の倍数となります.したがって,原点からの距離が√16nである点が第n層です.
n=1(第1層)の点は存在しません.n=2(第2層)が24次元の球の最大接触数であり,点の総計は
196550=65520×3
で与えられます.この値を与えるS^23上の球の配置もE8格子同様,本質的に1通りであることが証明されています.
n=3(第3層)の点の総計は
16773120=65520×256
で,一般に第n層の点数は
65520=16×4095
の整数倍(an)となります.
E8格子では格子点の個数はσ3(n)と関係していましたが,リーチ格子の場合,nの約数の11乗の総和σ11(n)と関係し,
65520(σ11(n)−τ(n))/691≒95σ11(n)
τ(n)はラマヌジャン数
となることが知られています.リーチ格子もアイゼンシュタイン級数と関係しているというわけです.
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ラマヌジャンは,デデキントのイータ関数(重さ1/2をもつモジュラー関数)
η(z)=q^(1/24)Π(1-q^n),q=exp(2πiz)
とおくと
Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24=Στ(n)q^n
zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)
を考え,そのフーリエ係数τ(n)を計算しました.
τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,τ(5)=4830,τ(6)=-6048,
τ(7)=-16744,τ(8)=84480,τ(9)=-113643,τ(10)=-115920,
τ(11)=534612,τ(12)=-370944,・・・
無限積をベキ級数に展開した式(フーリエ展開)が登場しましたが,このΔ(z)は,重さ12の保型形式
Δ(az+b/cz+d)=(cz+d)^12Δ(z)
と呼ばれるものになっていて,オイラーの五角数公式を拡張した24乗版と考えられます.
ラマヌジャン数は,オイラーの分割数のアナローグであり,
(1)mとnが素ならば,τ(m)τ(n)=τ(mn)
τ(2)*τ(3)=-6048=τ(6),τ(2)*τ(5)=-115920=τ(10)
τ(3)*τ(4)=-370944=τ(12),τ(2)*τ(9)=2727432=τ(18)
τ(4)*τ(5)=-7109760=τ(20),τ(3)*τ(7)=-4219488=τ(21)
(2)τ(p^(n+1))-τ(p^n)τ(p)=-p^11τ(p^(n-1))
(3)τ(n)=σ11(n)(nの約数の11乗の総和) (mod 691)
など驚くような性質をもっています.
したがって,
(σ11(n)−τ(n))/691
は整数となるのですが,このようにフーリエ係数がnに関して乗法的性質をもつ保型形式はヘッケ固有形式と呼ばれるもので,ここでもσ11(n)や691が現れていることに注意して下さい.
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[補]D4格子の第n近接
1次元格子(A1),三角格子(A2=G2),正方格子(D2=B2),単純立方格子(sc),体心立方格子(bcc),面心立方格子(fcc:A3=D3)の見取り図を描いて,第n近接の個数を数えてみると
第1近接,第2近接,第3近接,第4近接,・・・
1次元格子 :2,2,2,2,2,2,・・・
三角格子 :6,6,6,12,6,18,・・・
正方格子 :4,4,4,8,4,4,・・・
単純立方格子:6,12,8,6,24,24,・・・
体心立方格子:8,6,12,24,8,6,・・・
面心立方格子:12,6,16,12,24,8,・・・
が得られますが,このような単純素朴な方法では4次元のD4格子についての結果は得られません.
D4格子(=F4格子)は4次元の体心立方格子であり,正24胞体による4次元空間の充填形に相当するものです.ここで,σ0(n)をnの奇数の約数の和と定義します.そうすればD4格子では原点からのノルムがnである点の個数が
24σ0(n)
で与えられるのですが,
n=1 → 24・1=24個
n=2 → 24・1=24個
n=3 → 24・(1+3)=96個
n=4 → 24・1=24個
n=5 → 24・(1+5)=144個
n=6 → 24・(1+3)=96個
n=7 → 24・(1+7)=192個
n=8 → 24・1=24個
n=9 → 24・(1+3+9)=312個
n=10 → 24・(1+5)=144個
さらに,D4格子の各格子点の勢力範囲が1/2であることを使うと
Σ1/n^2=π^2/6
を証明できます.同様に,例外型リー環に属する8次元のE8格子では
240σ3(n)
であり,勢力域の体積が1/16であることから
Σ1/n^4=π^4/90
を得ることができます.
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[補]約数の総和関数の漸近評価
nの約数のk乗の総和関数σk(n)では
σk(n)=n^k・σ-k(n)
のように添字kに関して単純な対称性をもっています.
たとえば,n=6,k=3の場合,約数はd=1,2,3,6ですから
σ3 (6)=1+8+27+216
=216(1+1/8+1/27+1/216)
=6^3σ-3(6)
なお,約数の総和関数σ(n)の漸近的な振る舞いは
1/n^2・Σσ(k) → π^2/12+O(n/logn)
によって与えられます.同様に,約数の個数関数φ(n)では
1/n・Σ(φ(k)/k) → 6/π^2+O(logn/n)
1/n^2・Σφ(k) → 3/π^2+O(logn/n^2)
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[補]ガウスの整数
a,bを整数として
a+bi
で表される複素数が「ガウスの整数」です.すべてのガウス整数を約す整数が「単数」で,
±1,±i
の4個の単数があります.
素数は複素数体でも定義されますが,数論の教えるところによると,複素数体においても,単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.4k+3型素数はやはりガウス素数ですが,2および4k+1型素数はガウス素数の積に分解されるのです.
2=(1+i)(1−i)=i(1−i)^2
5=(1+2i)(1−2i)
29=(5+2i)(5−2i)
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[補]アイゼンスタインの整数
アイゼンスタインの整数は
a+bω
と書くことができます.ここで,ωは1の虚立方根で,x^2+x+1=0の根です.それに対して,ガウス整数にはx^2+1=0が対応しています.
アイゼンスタインの整数には,6つの単数
±1,±ω,±ω^2
があり,正六角形の対称性をもちます.
ここにもやはり素因数分解の一意性が成立します.2および6k+5型素数はアイゼンスタイン素数ですが,3および6k+1型素数はアイゼンスタイン素数の積に分解されます.
3=(1−ω)(1−ω^2)=(1+ω)(1−ω)^2=(1−ω)(2+ω)
37=(4−3ω)(4−3ω^2)=(4−3ω)(7+3ω)
−1の平方根は1の虚4乗根ですから,ガウス整数は円の4分体の中の整数環Z(i),アイゼンスタイン整数は円の3分体の中の整数環Z(ω)と考えることができるでしょう.
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[補]フルヴィッツの整数
ハミルトンの四元数
H=a+bi+cj+dk
において,a,b,c,dを整数に限った「四元整数」は4次元単純立方格子と同一視することができます.
ハミルトンの四元整数環は乗法の交換法則が成り立たない非可換環ですが,4次元空間内の原点を中心とする半径√nの3次元球面上には必ず格子点があることを主張しているのが「ラグランジュの定理」であることは,このコラムでもこれまで何回か説明したとおりです.
四元整数に
(1+i+j+k)/2
を追加した数の体系を「フルヴィッツの整数」と呼びます.フルヴィッツの整数全体は整数座標点と半整数座標点からなりますので,4次元体心立方格子であるというわけです.
なお,
(1+i+j+k)/2
は1の原始6乗根であり,
ζ=ζ++++=(1+i+j+k)/2
とおくと,
ζ^2=ζ-+++,ζ^3=−1,ζ^4=ζ----,ζ^5=ζ+---,ζ^6=1
となります.
単数すなわち1の約数は,
±1,±i,±j,±k 8個
ζ±±±±のあらゆる符号の組合せをとった16個
の計24個あります.
この24個は4次元空間で正24胞体をなしています.正24胞体に相当する3次元正多面体はありません.なぜかというと,正24胞体は自己双対かつ中心対称であり,3次元空間でそれに対応する正多面体はないからです.実は24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であって,例外中の例外といってもよいものなのです.
この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがあります.n次元空間において高度の対称性をもったベクトルの集合がルート系なのですが,n次元正単体とn次元立方体の対称群は,それぞれAn-1,Bn(Cn)で表されます.それに対して,24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られています.
2個の正24胞体を中心を一致させて重ねて回転させます.これはちょうど平面上でダビデの星が2つの正六角形を30°ずらして重ねたものと似ているわけですが,この対称性がF4に相当します.正24胞体は単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であるという事実がF4と関係しているのですが,この点もまた注目すべきものでしょう.
なお,正24胞体による空間充填は4次元独特の充填形です.正24胞体の頂点は正8胞体と正16胞体の頂点をなしますから,正24胞体は3次元の菱形12面体に対応するものであって,正24胞体による4次元空間充填形は4次元版の菱形12面体による空間充填形に相当します.すなわち,それは4次元の面心立方格子といってよいものであって,正24胞体に含まれる正16胞体は互いに60°をなしますから,D4の3対性をもっているのですが,4次元の最密正則胞体充填構造D4は正24胞体で埋めつくされているときであることが知られています.
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