■球の充填と格子(その1)

 
 球の充填および接触数の問題は,ヒルベルトの第18問題として取り上げられているものですが,1998年にトマス・ヘールによって
  「キャノンボール・パッキングよりも密度の高い3次元パッキングは存在しない」
ことが証明されたと伝えられています.
 
 多くの場合,最密充填は整然とした格子によってもたらされるのですが,次元によっては最大接触数が一見ランダムな配置によって実現する場合もあるので問題は複雑なのです.ランダムな配置まで含めても,面心立方格子が3次元空間における最密充填構造だというケプラー予想は,400年近く経ってやっと定理に昇格したことになります.→[補]
 
 今回のコラムでは,半径の等しい球をn次元ユークリッド空間R^nに効率的に詰め込む問題(ヒルベルトの第18問題)についてて触れてみることにしたいと思います.
 
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【1】kissing numberの問題
 
 1つの10円玉を机の上において,それと触れ合うようにかつお互いに重ならないようにして,6個の10円玉を置くことができます.1次元の球は区間であり,接触数は1次元のとき2個,2次元のとき6個であることは自明であって,幼稚園児でも解くことができそうです.
 
 平面上で与えられるたいていの問題は,3次元あるいは高次元の空間で考察することができます.一般に,n次元ユークリッド空間において,1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τn は接吻数(kissing number)あるいは接触数(contact number)と呼ばれていて,最密充填構造「同じ半径の球をできるだけ稠密詰めるにはどうしたらよいか」という空間の球による充填問題と深い関連があります.
 
 10円玉の例からわかるようにτ2=6ですが,n≧3のとき,τn はどうなるでしょうか? まず,3次元の場合,単位球のまわりに面心立方格子状に単位球を置いた場合の接触点
  1/√2(±1,±1,0)
  1/√2(±1,0,±1)
  1/√2(0,±1,±1)
を考えてみると,これら12個の相異なる2点に対応するベクトルの内積は,−1,±1/2,0のいずれかであり,したがって,その間の角度(球面距離)は60度以上となりますから,これらの点で接するように12個の単位球を置くことができます.したがって,τ3≧12は直ちにわかります.
 
 実際,正20面体の12個の頂点に対して,そこで接するように12個の単位球を置くことができます.この場合,頂点間の角度は約63゜26′になり,12個の球は互いに接触しておりません.少しだけなら自由に動かせるという状況ですから,その隙間を一つに集めたらもう一個球が入るのではないでしょうか? ところが,これができるかできないかはあまり自明ではありません.というより,3次元になるととたんに問題が難しくなってしまうのです.
 
 3次元の球の最大接触数τ3については,1694年にニュートンとグレゴリーの間で議論され,ニュートンは12を,グレゴリーは13を主張したといわれています.結局,ニュートンは12個が最大であるという証明ができず,グレゴリーも13個並べたわけではないので,「ニュートンの13球問題」と呼ばれるこの論争は引き和けに終わりました.
 
 1874年,ホッペが12個が最大であることという証明を試みましたが,不備があり,ようやく完全な証明がなされたのは1953年,ファン・デル・ヴェルデンとシュッテによってです.つまり,3次元空間内で1つの球には同時に12個の球しか接することができません.3次元のときは12個という解が得られるまで非常に長い年月がかかったことになります.
 
 4次元の場合はどうなるでしょうか? 24個の面心立方格子状配置の接触点
  1/√2(±1,±1,0,0)
  1/√2(±1,0,±1,0)
  1/√2(±1,0,0,±1)
  1/√2(0,±1,±1,0)
  1/√2(0,±1,0,±1)
  1/√2(0,0,±1,±1)
で重ならないように置けるので,τ4≧24は明らかです.また,τ4≦25は示されていますが,現在でもτ4が24であるか25であるかは未解決です.
 
 n次元ユークリッド空間において,1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τnの正確な値を決定する問題は大変難しく,4次元以上の高次元については,高度に対称的な格子状配置になっている8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決であり,現在,正確な値が知られているのは,τ1=2,τ2=6,τ3=12,τ8=240,τ24=196560の5つだけなのです.
 
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 少し詳細に調べていきましょう.4次元,5次元においては面心立方格子の類似品となりますが,6次元以上についてはそのようなことはもはや成立しなくなります.次元の上昇とともに,超球の間の隙間が大きくなっていくからです.8次元になると面心立方格子に十分な隙間ができるので,112個の接触点
  1/√2(0,・・・,±1,0,・・・,±1,0・・・)   (±1の個数は2つ)
と128個の隙間の点
  1/√8(±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1)   (+の個数は偶数)
に同じ大きさの球が詰め込み可能になります.
 
 専門的になりますが,τ8の240個の点はE8型の単純リー代数の240個のルート格子で実現されます.さらに,この詰め込みの断面(部分格子)が6次元と7次元のもっとも効率のいい格子状詰め込みを与えてくれます.
 
 また,1965年,リーチは群論と深く結びついた今日リーチ格子として知られるようになったものに基づいて,24次元空間の格子状詰め込みを構成しました.この詰め込みにおいては,なんと1つの超球に196560個もの超球が接触しています.τ24の196560個の点はリーチ格子の原点から一番近い点の集合として得られることが知られています.
 
 こうして,n≦24のときのすでに知られている上界・下界がオドリズコ,スローンによって与えられています.
 
  n     τn
  1       2
  2      6
  3      12
  4     24〜25
  5     40〜46
  6     72〜82
  7    126〜140
  8      240
  9    306〜380
  10    500〜595
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  24    196560
 
 つまり,8次元と24次元は,接吻数が計算できる特殊な次元なのであり,都合のいい格子(8次元の場合,格子にはE8,24次元の場合,リーチ格子という名前が付いている)がひとつに決まるので,格子上に球を配置することによってすぐに接吻数を数えることができるというわけです.
 
  [参]坂内英一・坂内悦子「球面上の代数的組合せ理論」シュプリンガー・フェアラーク東京,p214〜215
には,τ8=240,τ24=196560のゲーゲンバウアー展開を用いた証明が掲載されています(オドリズコ,スローン).
 
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【2】極大格子
 
 以下では,n=8,24の場合について最密充填を与える格子の構成法を略述したいのですが,その前に極大格子についても言及しなければなりません.
 
 単独で空間を充填する平面充填正多角形は3種類(正三角形・正方形・正六角形),空間充填正多面体は1種類(立方体)です.それに対して,4次元空間を1種類の正多胞体で埋めつくす図形は,正8胞体,正16胞体,正24胞体の3種類であり,4次元の最密正則胞体充填構造は,正24胞体で埋めつくされているときであることが知られています.
 
 正24胞体の頂点は正8胞体と正16胞体の頂点をなすことより,正24胞体は3次元の菱形12面体A3に対応するものであって,(3,4,3,3)は4次元版の菱形12面体による空間充填形に相当します.すなわち,それは4次元の面心立方格子といってよいものであって,4次元の最密正則胞体充填構造D4は正24胞体で埋めつくされているときであることが知られているというわけです.
 
 なお,n次元正単体とn次元立方体の対称群は,それぞれAn-1,Bn(Cn)で表されるのですが,24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られています.24胞体は単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であるという事実がF4と関係しているらしく,この点もまた注目すべきものです.
 
 そこで「単位格子群の2つの格子点の間の最小距離dminを最大にする格子群(極大格子群)を求めよ」というミニマックス問題が設定されます.すなわち,正多角形,正多面体に限らない最密規則的充填構造は何かという問題です.
 
 2次元では,与えられた最小距離をもつすべての格子中で,格子点密度のもっとも高いものは,正三角形格子(A2)ということになります.
 
 3次元では,すべての辺の長さが等しい平行六面体格子(菱形体格子)をつくってみると,辺が互いの60°の角度をなすようにしたとき,平行六面体の体積は最小値となります.これが面心立方格子状配置であって,その対称性はC3(立方体)ではなく,A3で与えられます.
 
 もっとも稠密な格子状球配置を求める問題はより高次元の空間においても考えることができるのですが,高次元空間においては,平面における正三角形格子や3次元空間における面心立方格子はもはや最密球配置を与えてはくれません.4次元のD4格子は4次元の体心立方格子であり,正24胞体による空間充填形に相当します.すなわち,4次元,5次元においては面心立方格子の類似品D4,D5となるのですが,6次元についてはそのようなことも成立しなくなり,例外型リー環に属するE6となります.
 
 これは次元の上昇とともに,超球の間の隙間が大きくなっていくからなのですが,8次元になると面心立方格子に十分な隙間ができるので,112個の面心立方格子状配置の接触点
  1/√2(0,・・・,±1,0,・・・,±1,0・・・)   (±1の個数は2つ)
と128個の隙間の点
  1/√8(±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1)   (+の個数は偶数)
に同じ大きさの球が詰め込み可能になります.
 
 この詰め込みの断面(部分格子)が6次元と7次元のもっとも効率のいい格子状詰め込みE6,E7を与えてくれるというわけです.こうして,極大格子については,現在のところ,n≦8のみ答えが知られています.
 
n   ルート   格子点間距離           球充填密度
1         1                1
2   A2    4√(4/3)  =1.075    0.906
3   A3    6√2      =1.122    0.740
4   D4    8√4      =1.189    0.619
5   D5    10√8     =1.231    0.465
6   E6    12√(64/3)=1.290    0.373
7   E7    14√64    =1.346    0.295
8   E8    √2      =1.414    0.254
 
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【3】kissing numberの上界と下界
 
 ここでまた,kissing numberの問題に戻りましょう.
  τ1=2,τ2=6,τ3=12
そして,4次元以上の高次元では,8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決です.
  τ8=240,τ24=196560
 
 n次元球のkissing numberの上界は,コクセターの方法によって粗雑ながら押さえられます.それは1球面上に大きさの等しい球帽(球面上の円,球面半径φ)を埋め込むときの最密充填の問題に帰着されるのですが,それは単体的密度限界
  dn=(2n/(n+1))^(-n/2)Dn
    =(n+1)^(1/2)(n!)^2/2^(3n/2)・vnFn(1/2arcsec(n)θ)
と類似の方法になっています.
 
 n次元正単体(二面角2θ)の頂点を超球の中心において,(n−1)次元球面上に射影します.球面上には(n−1)次元球面正三角形ができ,その面積は
  Σ=2^(-n)n!snFn(θ)
で与えられます.これは正単体の1辺の球面距離2φの関数になります.
 
 また,σを球面正三角形の頂角の和とすると,球面上にはn個の点が配置され,(n−2)次元球帽が(n−1)次元球面を覆うことになります.そして,1つの頂角は(n−1)次元正単体を(n−2)次元球面上に射影したものに等しくなりますから
  σ=n2^(-n+1)(n−1)!Fn-1(θ)
 
 すなわち,上界は
  (p,3,・・・,3),θ=π/p
なる三角形面正多面体(単体的正多面体:n−1次元面が単体)の頂点に(n−2)次元球を配置する問題となるのですが,ここで,球面上にN(φ)個の点を配置した場合,不等式
  N(φ)≦σsn/Σ
が成り立ちますから,最終的に
  N(φ)≦2Fn-1(θ)/Fn(θ)
  sec2θ=sec2φ+n−2
を得ることができます.
 
 kissing number(τn)に関しては,φ=π/6の場合を考えればよいので,  τn≦2Fn-1(1/2arcsecn)/Fn(1/2arcsecn)
となり,
  n=2 → 2F1(π/6)/F2(π/6)=6
  n=3 → 2F2(1/2arcsecn3)/F3(1/2arcsecn3)=6/(3-π/arcsec3)=13.39・・・
  n=4 → 2F3(1/2arcsecn4)/F4(1/2arcsecn4)=5(1+1/(2-2π/arcsec4))=26.44・・・
 
 5次元以上では,数値積分によらなければなりませんが,
  fn(x)=Fn(1/2arcsecx)
と書くことにすると,
  f2(x)=arcsecx/x
  fn(x)=1/π∫(n-1,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
     =fn(n)+1/π∫(n,x)fn-2(x-2)/x√(x^2-1)dx
  fn(x)=fn-1(x)-1/3fn-3(x)+2/15fn-5(x)-17/315fn-7(x)+62/2835fn-9(x)-・・・(n:odd)
  fn(x)=1/3fn-2(x)-2/15fn-4(x)+17/315fn-6(x)-62/2835fn-8(x)+・・・(n:even)
 
 リーチは台形則を用いて数値積分し,
  2fn-1(n)/fn(n)
を求めました.その結果は
  2f3(4)/f4(4)=22.44・・・
  2f4(5)/f5(5)=48.70・・・
  2f5(6)/f6(6)=85.81・・・
  2f6(7)/f7(7)=146.57・・・
  2f7(8)/f8(8)=244.62・・・
以下,(9)401,(10)648,(11)1035,(12)1637,・・・と続きます.
 
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 n次元球のkissing numberの上界は立体角による評価,すなわち,正四面体配置(相互に接するよう球を配置)の問題でしたが,それに対して,下界は極大格子状配置による評価,すなわち,
  A1,A2,A3,D4,D5,E6,E7,E8
の問題となります.
 
 たとえば,n=3のみならず,n=4,5の場合も面心立方格子状配置
  (±1,±1,0)
  (±1,±1,0,0)
  (±1,±1,0,0,0)   (±1の個数は2つ)
では2n(n−1)個の球と接することができます.
 
 n=6,7,8では面心立方格子状配置の接触点以外にも隙間ができるので,隙間の分が加わって,それぞれ
  60+12=72
  84+42=126
  112+128=240
個の同じ大きさの球が詰め込み可能になります.(E6,E7,E8格子はそれぞれ接触数72,126,240を与える.)
 
 この隙間は,9個の整数に対して法3で合同となるので,
  x1+x2+x3=x4+x5+x6=x7+x8+x9=0  (n=6)
  x1+x2+x3+x4+x5+x6=x7+x8+x9=0  (n=7)
  x1+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9=0  (n=8)
であって,
  12×3=42,42×3=128
という関係にあり,E8では9個の球によって完全に充填した構造となっています.
        第1層    第2層    第3層
  E6 格子   72    270    720
  E7 格子  126    756   2072
  E8 格子  240   2160   6720
 
 そして,最終的には簡単なグラフ的算法に帰着されるのですが,1≦n≦8では
  n  1  2  3  4  5  6  7  8
  下界 2  6  12  24  40  72  126  240
となり,ガウス記号を用いて
  下界=n([2^(n-2)/3]+n+1)
の形にまとめられます.→(この式はn>8に対しては成り立ちません.n=9のとき468となるのですが,コクセターの上界401よりも大きくなってしまうからです.)
 
 これより
  n     τn 
  1       2  
  2      6  
  3     12〜13 
  4     24〜26 
  5     40〜48 
  6     72〜85 
  7    126〜146
  8    240〜244
となります.
 
 以下に,現在知られている上界・下界を記しますが,コクセターの方法は,現在知られている上界よりほんの少し大きい方に偏っていることがわかります.このようにτnの知られている上限と下限の間の差はまだ非常に大きいといえます.
 
  n     τn       n     τn     
  1       2        13    1130〜2233   
  2      6        14    1582〜3492   
  3      12        15    2564〜5431   
  4     24〜25       16    4320〜8313   
  5     40〜46       17    5346〜12215  
  6     72〜82       18    7398〜17877  
  7    126〜140      19   10668〜25901  
  8      240       20   17400〜37974  
  9    306〜380      21   27720〜56852  
  10    500〜595      22   49896〜86537  
  11    582〜915      23   93150〜128096  
  12    840〜1416      24     196560    
 
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[補]kissing numberの漸近評価
 
 kissing numberの漸近評価については
  1/b=sec2θ−n+1
とおくと,
  Fn(θ)〜√{(1+nb)/2}・1/(n!e^(1/b))・(2e/πnb)^(n/2)
したがって,
  N(φ)〜2^(1-n/2)√(πcos2φ)n^(3/2)/(e(sinφ)^(n-1))
 
 φ=π/6のとき
  τn 〜 2^((n-1)/2)n^(3/2)√π/e
となります.
 
 また,上限に関しては
  τn ≦ 2^(0.401n(1+o(1)))
という式が知られています.
 
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[補]ケプラー問題
 
 1611年,ケプラーは,物質を構成する粒子は体積を最小とするように自己を組織化するだろうという構成原理を考えました.そこで,粒子が球形だと仮定して,さまざまな配置の空間充填率を計算してみました.
 
 ケプラーが最初に試みたのは,それぞれの球が6個の球に囲まれるように第1層を構成し,第2層は第1層のくぼみに球を置くという積み方です.これは別の角度からみると,立方体の8個の頂点と6面の中心に球が配置されているところから,面心立方格子と呼ばれている配置ですが,この積み方は八百屋の店先でミカンなどの山を安定に積み上げるために使われている日常的な配置です.この場合の充填率は√2π/6(74.04%)になります.
 
 他の配置と比較してみましょう.たとえば,下の層を正方形配列としその真上に球をのせていく単純立方格子の充填率はたったπ/6(53%)にすぎません.また,六方格子(第1層は面心立方格子と同じ正三角形配列だが,第2層は球の真上に球をのせる)の充填率は√3π/9(60%)であり,立方体の8個の頂点と中心に球を配置した体心立方格子の充填率は√3π/8(68%)です.こうして,さまざまな配置を調べてみたケプラーは,面心立方格子が最密充填構造であるという結論に達しました.
 
 面心立方格子が最も密な球の充填方法だろうという予想は400年近く前のケプラーまでさかのぼります.日常の経験からしても,同じ大きさの球の最も効果的な配置問題は自明なものと考えてしまいがちで,直感的に面心立方格子をなす場合が最大に詰め込んだ配置のように思えます.しかしだからといって,無限にある可能性をすべてひっくるめて証明したわけではないので,これは定理ではなく予想にすぎません.ランダムな配置まで含めると,空間充填率が74.04%よりも引き上げられるかもしれないからです.
 
 ケプラーの問題については,大半の数学者がまず間違いないだろうと考え,すべての物理学者が当たり前だと思っていたのですが,面心立方格子が3次元空間における最密充填構造だという証明は,何世紀にもわたる研究にもかかわらず未解決で,1994年に解決されたフェルマーの最終定理に取って代わる数学上の未解決問題になっていたというわけです.
 
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