結晶の（外的）対称性とは結晶構造を保つ合同変換群（回転・鏡映・平行移動の合成により得られる変換）のことである．一方，内的対称性は，位相的結晶を有限グラフの無限アーベル被覆グラフとして数学的に定義され，結晶はその周期的実現として位置づけたものであった．

　これが（その１１）で述べたことであるが，補足しておきたい．すなわち，内的対称性は対応するグラフの自己同型群が内的対称性を表現しているというわけであるが，理解しにくい定義である．

　内的対称性は外的対称性より大きいかあるいは等しいので，一致するときが最大対称性である．また，結晶が合同変換に対する強い等方性をもつということは，全長点の次数が一定で，結晶を不変にする合同変換が存在することをいう．１９６７年に隕石の落下地点のクレータで発見されたロンスデーライトはダイヤモンドに似た結晶構造をもるが，強い等方性はもたない．

　ダイヤモンド結晶の次数は４（ｓｐ3）であるが，Ｋ４結晶の次数は３（ｓｐ2）である．砂田先生はダイヤモンド以外に最大対称性と強い等方性をもつ結晶構造がただひとつ存在することを発見したのである．

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