■計算可能な多胞体(その4)

 これまで,高次元の準正多面体について知られていることはほとんどない.まず,第一の問題として,n次元準正多胞体にはどれだけの種類があるか? 3次元のねじれ立方体とねじれ12面体に相当する特殊型は取り扱わないことにするが,重複するものを除くことによって,下表が得られる.

次元  正多胞体  準正多胞体

3      5     11(重複を除く)

4      6     39(重複を除く)

5      3     47

6      3     95

n(≧5)  3     2^n+2^(n-1)+2^[(n-1)/2]−5

 この表は石井源久先生によって得られたものである.しかし,これらが一律に重要というわけではなく,この中から重要な3つのクラスを取り上げることができる.

 第1のクラスは,ミンコフスキーが原始的平行多面体として取り上げた2(2^n−1)胞体である.とくに,primitive,principal,maximalの条件を満たすものは置換多面体(permutahedron)と同値であって,多面体的組み合わせ論の重要な研究対象となってきた.にも関わらず,その面数公式は先人達の挑戦を退けてきた難題となっている.

 さらに,これまで知られていなかった2つの重要なクラス,ひとつは置換多面体の正軸体版とみなすことができる3^n−1胞体,もうひとつには平行多面体と同じく空間充填性をもつ2^n+2n胞体を構成し,その面数公式・体積公式について考えてみる.

 とくに,n=3のとき,空間充填2(2^n−1)胞体と空間充填2^n+2n胞体は同形(切頂八面体)になることを注意しておく.切頂八面体はすべての次元を通じて唯一,空間充填2(2^n−1)胞体かつ空間充填2^n+2n胞体という性質をもつ多面体である.このことは3次元平行多面体の元素数が1であることと密接に関係している.

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[補]置換多面体

 a1>a2>・・・>anとするとき,(a1,a2,・・・,an)の添字を置換して得られるn!個の点からなる(n−1)次元の多面体は置換多面体(順列多面体)と呼ばれる.とくにa1=n,a2=n−1,・・・,an=1の場合を指すこともある

 置換多面体は置換を1回適用することで同じものになる2頂点を辺で結んでできる.たとえば,n=4の場合の置換多面体で,頂点1342と結ばれるのは1432,1324,3142の3頂点である.

 この多面体は単純ゾノトープで,2^n−2個のファセットをもつ.したがって,n次元置換多面体は(n+1)!個の頂点と2(2^n−1)個のファセットをもつことになる(2次元置換多面体は六角形,3次元置換多面体は切頂八、面体).

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