■詐欺ジョンソン・ザルガラー多面体?(その10)

 予想は肯定的に証明されれば定理となるが,予想を否定するには反例を作る必要がある.したがって,数学では反例を作ることは定理を証明することと同様に重要である.

 中川宏さんの作った凸多面体はとんでもない性質をもつことが判明したが,希有な反例あるいは唯一の反例であるかどうかはわかっていない.今回のコラムでは,JZ多面体の反例あるいはニアミス多面体を系統的に作る方法について考えてみた.

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 JZ多面体は

a. もともとは Johnson が分類.[1966]

b. それを Zalgaller がコンピュータでチェックして正しいことを確認[1969]

したものです.JZ多面体では分類と場合分けを網羅的に行なって,可能なJZ多面体はすべて見つけたことになっています.ですから,まずはどこが「間違っている」ということをきちんと示す必要があります.

 Johnsonの論文ではJZ93を考察した痕跡は見られませんが,Zalgallerの論文ではp139の図186で同じ多面体を考察していたことがわかります。ロシア語の論文なので,なぜそれをオミットしたかはわかりませんが,まずは元の論文を精読して,どこが間違っているかは明確にすることができました.

 また,いくら詳細に検討しようが,この分類と場合分けでは間違い(考え落としているものがある)は避けようがないこともわかりました.すなわち,「新種」である可能性は大いにあり,もし本当に新しいジョンソン立体なら,それは大発見ということになります.

 これでニアミス多面体の系統的な探索法もはっきりしました.ザルガラー論文をもとに正方形を2つの三角形に置き換えるとか,正五角形を3つの三角形に置き換えるとか・・・場当たり的な探索よりもこの方法で2匹目のどじょうを狙うのが早道です。

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