■和算と算額(その43)

 算額とは,神社や仏閣に吊るされる主として幾何学的な問題の描かれた木札である.17世紀から19世紀までに何千という数の算額が奉納された.証明や解答を木札に書いて社に吊るすことは宗教がらみではあるが奉納だけでなく,成果を宣伝する意味もあった.今日でいえば学会発表や論文投稿に相当するものだろう.

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 本にまとめられたものは少ないが,非常におもしろい幾何学問題があり,ぜひともここで紹介させて頂きたい.いずれも1830年一関の和算家・千葉胤秀編集の「算法新書」より出典とある.

[Q]与えられた△ABCの各辺を伸長した位置に点A’,B’,C’をとって作った△A’B’C’がもとの△ABCと相似になっている.

  A’B’=3寸,B’C’=6寸,A’C’=4寸,AA’+BB’+CC’=5寸のとき,CC’の長さを求めよ.

[Q]外円内に甲乙乙丙丁の5円が,十字型

  (甲)

 (乙丁乙)

  (丙)

に内外接している.外円の直径は6寸,甲円の直径が2寸のとき,丙円の直径を求めよ.

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 これにインスパイアされて,和算風の問題を作ってみた.

[Q]△ABCの各辺を1:2の比に順次内分した点D,E,Fとし,AD,BE,CFの2本ずつの交点が作る△PQRを考える.3辺の長さa,b,cはすべて整数で,△PQRがもとの△ABCと相似になっている.a+b+c=58寸のとき,辺の長さa,b,cを求めよ.

[Q]外円内に甲乙乙丙丙丁の6円が戊円を取り巻いて内外接している.

  (甲)

 (乙戊乙)

 (丙丁丙)

外円の直径は18寸,甲円の直径が3寸のとき,丁円の直径を求めよ.

[Q]外円内に甲乙乙丙丙の5円が丁円を取り巻いて内外接している.

  (甲)

 (乙丁乙)

  (丙丙)

外円の直径は30寸,甲円の直径は丁円の直径に等しいとき,丁円の直径を求めよ.

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