■n角の穴をあけるドリル(その58)
ピラミッドの巨大な岩はローラーに載せて運搬されたと思われるが,ローラーでは地面からローラーの最高点までの距離が一定である.もちろん,円は定幅であるからローラーの役目を果たすが,ローラーの断面はかならず円でなければならないわけではない.
直観に反し,実に様々な形の定幅曲線が存在する.そのうちもっともシンプルなものが「ルーローの三角形」である.
フランツ・ルーロー「機械の運動学」1876年
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【1】四角い穴をあけるドリル
ルーローの三角形は正方形のどの辺にも常に内接するよう回転させることができる.1914年,ハリー・ジェームズ・ワットはこの性質を活かし,正方形の穴をあけるドリルを設計した.
厳密にいうと,四隅は尖ってなく丸みを帯びている.穿かれる穴の面積は正方形の面積を1とすると0.9877・・・となる.(概4角形の穴をあけるドリル)
正方形の変形部分をなくすためにはうまい方法がある.
B. Cox and S. Wagon, Drilling for Polygons:, American Math Monthly, 119(2012), 300-312
には概n角形ではなく,正n角形になるドリルが掲載されていることを紹介しておきたい.
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【2】ルーローの三角形の車輪
ルーローの三角形では車輪は作れない.ルーローの三角形に軸をとりつけて転がすと最高点の高さは変わらないが軸がぶれるからである.
ところが,これについても中心がぶれるのを補正する特別なチャックを用意すると車輪を作ることができる(スタン・ワゴン).
American Math Monthlyの論文(正n角形の穴をあけるドリル)もこの考え方の延長線上にあるアイデアである.
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