■畳の敷き方数(その4)

 畳あるいはドミノ(1×2の長方形)によるタイル貼りを考える.1辺の長さ2の正方形の畳敷きは2個の畳を水平に置くか垂直に置くかの2通りの敷き方がある.チェス盤(1辺の長さ8)に対しては12988816通りある.統計物理学ではドミノに相当するものが2原子分子(ダイマー模型)であり,ドミノタイル貼りは統計物理学の問題としても一役担っている.

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 2×nの長方形に畳を敷き詰める数はフィボナッチ数Fnとなる.また,3×nの長方形に畳を敷き詰める数は

  U2n=(2+√3)^n/(3−√3)+(2−√3)^n/(3+√3)=[(2+√3)^n/(3−√3)]

でフィボナッチ数に類似している.この数は三角数Tn=n(n+1)/2や五角数Pn=n(3n−2)/2にも関係しているという.

 それにに対して,

[Q]n畳間に畳を敷き詰める方法は何通りあるか(n×2mの長方形の部屋にn×m枚の畳を敷く場合の敷き方は何通りあるか)

はかなりの難問である.

[A]m=1の場合はやさしい.n枚の畳を鰻の寝床のように細長いn×2の間取りに敷くその敷き方の数Fnになる.半畳の正方形の1辺を単位として数えると,敷き方の数はnを1と2に分割する組み合わせ数(n段の階段を一歩で1段または2段昇ることにする昇り方の数)に一致し,それは

  Fn=Fn-1+Fn-2

の関係になるから,フィボナッチ数列(初項1,第2項2)

  1,2,3,5,8,13,・・・

  Fn=1/√5[{(1+√5)/2}^n+1−{(1−√5)/2}^n+1]

が現れることになる.

 細矢治夫先生によると,この問題は不思議なことに物理学の問題と深く関係しているという.物理学研究者の2つのグループが1961年に独立に発表した結果では,

  K(n×2m)=2^2m[(n+1)/2]Π(k=1~m)Π(l=1~[(n+1)/2]{cos^2(lπ/(n+1))+cos^2(kπ/(2m+1))}

 とくにm=1のときは

  K(n×2)=Π(l=1~[(n+1)/2]{1+4cos^2(lπ/(n+1))}

という式が出てくるが,これはフィボナッチ数列の三角関数表現になっているとのことである.

 フィボナッチ数列は指数関数的に増加するから,K(n×2m)は爆発的に増加するはずである.プログラムは簡単であるから自分で計算してみると

m/n 1 2 3 4 5

1 1 2 3 5 8

2 1 5 11 36 95

3 1 13 41 281 1183

4 1 34 153 2245 14824

5 1 89 571 18061 185928

 m=2の段を見れば

  6畳間に畳を敷き詰める方法は11通り

  8畳間に畳を敷き詰める方法は36通り

  10畳間に畳を敷き詰める方法は95通り

あることがわかる.ただし,ここでは回転や鏡映で重なるものを別々のパターンとして数えている.

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 フィボナッチ数列の三角関数表現

  K(n×2)=Π(l=1~[(n+1)/2]{1+4cos^2(lπ/(n+1))}

において,n→2mと置き換えれば

  K(2m×2)=K(2×2m)

 =Π(k=1~m]{1+4cos^2(kπ/(2m+1))}

となる.また,n=1のとき,畳の敷き方はただ1通りであるから,

  K(1×2m)=1

  1+4cos^2(kπ/(2m+1))

の1はK(1×2m)=1の場合に対応していて,組み合わせ数の本質的な部分は

  4cos^2(kπ/(2m+1))

と思われる.そこで,K(n×2m)を求めるには1の代わりに

  4cos^2(lπ/(n+1))

を用いればよいことになる.

 以上のことから,

  K(n×2m)

 =Π(k=1~m)Π(l=1~[(n+1)/2]{4cos^2(lπ/(n+1))+4cos^2(kπ/(2m+1))}

 =2^2m[(n+1)/2]Π(k=1~m)Π(l=1~[(n+1)/2]{cos^2(lπ/(n+1))+cos^2(kπ/(2m+1))}

と考えられるのである.1が消えた理由を無理矢理こじつけたようであるが,個数を数えるにはある行列式の固有値を計算する必要があるという.

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