■多面体的組み合わせ論(その2)
0/1多面体とは,すべての頂点の座標が0か1である多面体で,立方体の頂点の部分集合の凸包のことである.持ち得るファセットの最大数fは
2^n≦f≦n!+2n
で,上界と下界の間には非常に大きなギャップがある.今回のコラムでは0/1多面体の仲間たちを紹介したい.
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【1】割当多面体
たとえば,4×4置換行列(各行各列の成分に1がちょうど1つ現れ,他の成分が0の行列),
[0,1,0,0]
[0,0,0,1]
[1,0,0,0]
[0,0,1,0]
のなす空間を16次元空間と思うと各行列は0/1ベクトルとなり,その凸包は0/1多面体となる.
n次正方行列Mは,
[1]各成分が非負で,各行角列の和が1のとき,2重確率行列
[2]各行各列の成分に1がちょうど1つ現れ,他の成分が0のとき,置換行列
と呼ばれる.また,前述の4×4置換行列は完全2部グラフK4,4の完全マッチングと対応する.
一方,任意の2重確率行列は,置換行列の凸結合で表現されることが,バーコフとフォン・ノイマンによって独立に示されている.そのため,2重確率行列全体は置換行列を端点とする凸多面体となり,割当多面体(バーコフ多面体,完全マッチング多面体,2重確率多面体)と呼ばれる.
この多面体はn!個の頂点とn^2個のファセットをもつ(n−1)^2次元の多面体である.割当多面体と置換多面体の間には射影写像がある.
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【2】巡回セールスマン多面体
巡回セールスマン問題とはn頂点の完全グラフKnのすべての頂点を回って戻ってくる最短ハミルトン経路を問う問題である.
置換行列が完全2部グラフKn,nと対応するのに対して,巡回セールスマン多面体は完全グラフKnに対応している.
この多面体は(n−1)!/2個の頂点をもつnC2−n=n(n−3)/2次元の多面体である.
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