■有理数と無理数のディオファントス近似

 無理数uは,誤差が

  |u−a/b|<1/2b^2

である無限個のディオファントス近似をもつ.たとえば,

  |π−22/7|<1/2(7)^2=0.01

  |π−335/113|<1/2(113)^2=0.00039

 また,ペル方程式

  x^2−dy^2=±1

を満たすx/yは√dの最良近似を与える.

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【1】√2の近似値とペル数列

 素数が無限に存在すること・√2が無理数であることは,ギリシア数学のなかでも有名な定理です.それぞれユークリッドとピタゴラスが背理法を用いて証明しています.

 √2は2つの整数の比p/qではないので,√2=p/qすなわちp^2=2q^2になるような2つの整数p,qを見つけることはできません.しかし,誤差±1を許すことにすると

  2q^2=p^2±1  (ペル方程式)

なる2つの整数p,qを見つけることができます.

  2^2+2^2=3^2−1

  5^2+5^2=7^2+1

  12^2+12^2=17^2−1

  ・・・・・・・・・・・・・

このとき,±1は交互に繰り返し現れます.

 √2の最良近似値は1/1,3/2,7/5,17/12,41/29,・・・です.このような分数を全部求めるには1/1から出発して1+1=2が次の分母になり,1+2=3が次の分子になる,3+2=5が第3の分母,2+5=7が第3の分子になる,すなわち,1つ前の分数の分子と分母の和が次の分母になり,ひとつ前の分数の分母を2倍したものとその分子の和が次の分子になり,同様に続いていくという算術的な規則があります.

  1,2,5,12,29,70,169,408,・・・

はペル数列(an=2an-1+an-2)と呼ばれます.

  1/1↓ ↑3/2↓ ↑7/5↓ ↑17/12↓ ↑41/29↓ ・・・

 すなわち,ペル方程式:p^2−2q^2=±1を満たすp/qがひとつの分数で,P/Qが次の分数だとすると

  Q=p+q,P=q+Q=p+2q

  P^2−2Q^2=2q^2−p^2=±1

となって,P/QもまたP^2−2Q^2=±1となる分数を与えることができることになります.1/1から始まって次々に解となる分数を見つけることができるというわけです.

  p/q→P/Q=(p+2q)/(p+q)

(−1) 1/1<7/5<41/29<239/169<・・・<√2<・・・<577/408<99/70<17/12<3/2 (+1)

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【2】有理数のディオファントス近似

[Q]aグラムとbグラムのおもりがたくさんあるとき,どんな重さを計ることができるのだろうか?

[A]d=gcd(a,b)とすると

[1]ax+by=dは整数解をもつ.

[2]ax+by=nが整数解をもつならな,nはdの倍数である.

 すなわち,計れる重さの最小数が最大公約数であって,その倍数全体を計ることができるのである,ただし,おもりの選び方は1通りでないことに注意.たとえば,a=22,b=15の場合,

  6=22×(−12)+15×18=22×3+15×(−4)

 一般に1組の特殊解を(x0,y0)とすると,一般解は

  x=x0−bt/d,y=y0+at/d

で与えられる.もし,使用するおもりの数を最小にしたいならば,

  |x{+|y|=|x0−bt/d|+|y0+at/d|

の最小値を求めればよい.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 a,bが互いに素ならば,d=gcd(a,b)=1であるから,

  ax+by=1

を満たす整数(x,y)が存在する.このことから,誤差±1を許すことにした有理数のディオファントス近似が存在することがわかるだろう.すなわち,有理数uは,誤差が

  |u−a/b|≦1/2b^2

であるディオファントス近似をもつ.

 たとえば,103/127のよいディオファントス近似をみつけるために,

  103×37+127×(−30)=1

より,

  |103/127−30/37|=1/(127×37)≦1/2(37)^2

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【3】問題

[Q]n=38  (mod 103)

   n=17  (mod 127)

を満たす最小の正の整数nををみつけよ.

[A]中国式剰余定理の問題である.前節より

  103×37+127×(−30)=1

よって,

  1=103×37  (mod 127)

  1=127×(−30)  (mod 103)

  17=103×37×17  (mod 127)

  38=127×(−30)×38  (mod 103)

  n=103×37×17+103×37×17=−79993

  n=−79993+(103×127)k

は2つの合同式を満たす.k=7のとき,nは最小の正の整数11574となる.

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