■4次元正多胞体の包含関係(その2)

 まず最初に(その1)での議論は

  Coxter, Regular Polytope (改訂版, Dover, 1973),p157

のみならず同書p240,また,これから行う議論もp268,287にあるものと結果的には同じものであるが,より理解しやすいものになっていることを申し添えておきたい.

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【1】結論を先にいうと

 6種類ある4次元正多胞体の包含関係を考えよう.興味深いことに,正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」である.3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.

 他方,5次元以上で4次元の正120胞体のような「万能正多胞体」が存在しないことも既知の結果である.

 一般に,正α胞体の頂点をうまく結んで正β胞体が含まれる場合,両者の包含関係は頂点数の整除性によって決定されると考えるのは早とちりである.たとえば,正12面体(頂点数20)の中に立方体(頂点数8)を内接させることはできるが,20は8で割り切れない.

 4次元の正120胞体(頂点数600)>正8胞体(頂点数16)もそうなっている.正8胞体の頂点数16が正120胞体の頂点数600の約数でないから,正120胞体は正8胞体を含まないとまじめに書いた本もあったが,少々早合点? 頂点数が約数になっていなくても別に矛盾ではない.逆に頂点数が約数になっていても包含関係が成立しない場合もある.

 結論を先にいうと,6種類の4次元正多胞体の包含関係(巡礼)をまとめると,

  正16胞体≦正8胞体≦正24胞体≦正600胞体≦正120胞体

  正5胞体≦正120胞体

となる.120÷5=24なので,一見正600胞体の120個の頂点からうまく選べば正5胞体が24個含まれても良いように見えるが,正600胞体の頂点を結んでも同じ中心をもつ正5胞体は作れない.4次元正多胞体の中で正5胞体は何か異端児である.

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【2】頂点による包含関係(inclusion property)

 6種類の4次元正多胞体の包含関係を調べるために,頂点数の整除性をみるのではなく,対角線の長さを求めてみることにしよう.

[1]正5胞体

 (1,0,0,0),(0,1,0,0),(0,0,1,0),(0,0,0,1),((1−τ)/2,(1−τ)/2,(1−τ)/2,(1−τ)/2)を頂点とする1辺の長さ√2の正5胞体を考える.重心は((3−τ)/10,(3−τ)/10,(3−τ)/10,(3−τ)/10)であるから,外接球の半径は2/√5.

 外接球の半径を4に調整すると,ある頂点における対角線の長さLjの本数は

  L1=2√10,N1=4

[2]正8胞体

 (±1,±1,±1,±1)を頂点とする正8胞体の1辺の長さ2,外接球の半径2.外接球の半径を4に調整すると,

  L1=4,N1=4

  L2=4√2,N2=6

  L3=4√3,N3=4

  L4=8,N4=1

[3]正16胞体

 (±1,0,0,0),(0,±1,0,0),(0,0,±1,0),(0,0,0,±1)を頂点とする正16胞体1辺の長さ√2,外接球の半径1.外接球の半径を4に調整すると,

  L1=4√2,N1=6

  L2=8,N2=1

[4]正24胞体

 正8細胞体の頂点(±1,±1,±1,±1)と正16胞体の頂点(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)を頂点とする正24胞体の1辺の長さ2,外接球の半径2.外接球の半径を4に調整すると,

  L1=4,N1=8

  L2=4√2,N2=6

  L3=4√3,N3=8

  L4=8,N2=1

[5]正600胞体

 τ=(1+√5)/2とおく.正24胞体の頂点(±1,±1,±1,±1),(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)24点と(±τ,±1,±1/τ,0)の偶置換で表される96点,合計120点を結んでできる正600胞体の1辺の長さ√(6−2√5)=√5−1=2/τ,外接球の半径2.外接球の半径を4に調整すると,

  L1=2√(6−2√5),N1=12

  L2=4,N2=20

  L3=2(10−2√5),N3=12

  L4=4√2,N4=30

  L5=2√(6+2√5),N5=12

  L6=4√3,N6=20

  L7=2√(10+2√5),N7=12

  L8=8,N8=1

[6]正120胞体

 4次元正120胞体の構成は4次元正正多胞体のなかでも最も厄介であるが,600個の頂点の座標は,σ=(3√5+1)/2,σ’=(3√5−1)/2とおくと,正600胞体の頂点を含む(±2,±2,±2,±2),(±4,0,0,0),(0,±4,0,0),(0,0,±4,0),(0,0,0,±4),(±2τ,±2,±2/τ,0)216点と(√5,√5,√5,1),(τ^2,τ^2,√5/τ,1/τ),(σ、1/τ,1/τ,1/τ),(τ√5,τ,1/τ^2,1/τ^2)に偶数個の負号をつけた点の置換256点,(σ’,τ,τ,τ),(3,√5,1,1)に奇数個の負号をつけた点の置換128点で与えられる.1辺の長さ√2(3−√5)=2√2/τ^2,外接球の半径4.

  L1=√(28−12√5),N1=4

  L2=√(12−4√5),N2=12

  L3=√(24−8√5),N3=24

  L4=2√2,N4=12

  L5=√(36−12√5),N5=4

  L6=√(20−4√5),N6=24

  L7=√(32−8√5),N7=24

  L8=4,N8=32

  L9=√(28−4√5),N9=24

  L10=√(12+4√5),N10=12

  L11=√(40−8√5),N11=24

  L12=2√6,N12=28

  L13=√(36−4√5),N13=24

  L14=√(20+4√5),N14=24

  L15=4√2,N15=54

  L16=√(44−4√5),N16=24

  L17=√(28+8√5),N17=24

  L18=2√10,N18=28

  L19=√(24+8√5),N19=24

  L20=√(52−4√5),N20=12

  L21=√(36+4√5),N21=24

  L22=4√3,N22=32

  L23=√(32+8√5),N23=24

  L24=√(44+4√5),N24=24

  L25=√(28+12√5),N25=4

  L26=2√14,N26=12

  L27=√(40+8√5),N27=24

  L28=√(52+4√5),N28=12

  L29=√(36+12√5),N29=4

  L30=8,N30=1

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【3】結論

 正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.たとえば,正5胞体は(−σ,1/τ,1/τ,1/τ),(1/τ,−σ,1/τ,1/τ),(1/τ,1/τ,−σ,1/τ),(1/τ,1/τ,1/τ,−σ),(1,1,1,1)を結んでできる.しかしながら,正600胞体の頂点を結んでも同じ中心をもつ正5胞体は作れない.

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