■平行体の体積とグラミアン(その70)

 今回のコラムでは(その65)(その66)で考えたことをもう一度座標に戻って再考したい.ひとつの対角線を含む軸面による切り口は座標をとって調べることができるので,地道に調べてゆくのが本筋かと考えられる.座標幾何学は論理を優先し面白味に欠けるが着実であるというわけである.

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【1】多面体のすべての頂点を求めること

 多面体は連立1次不等式

  Σaijxj≦bi

を満たす点の集合ですから,シンプレックス法を用いて頂点を探索する必要があるのではないかと考えられました.

 n次元正単体の基本単体の座標は

  P0(0,0,・・・,0)

  P1(a1,0,・・・,0)

  P2(a1,a2,0,・・・0,0)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

  Pn-1(a1,a2,a3,・・・,an-1,0)

  Pn(a1,a2,a3,・・・,an-1,an)

切頂切稜点は

  Q(b1,・・・,bn)=(a1y1,・・・,anyn)=b,  bn=0

である.

[1]基本単体のファセット

  x1≦a1

  x1/a1−x2/a2≧0

  ・・・・・・・・・・・・・

  xn-1/an-1−xn/an≧0

  xn≧0

[2]切頂・切稜点Qを通り,PkPnに直交する超平面(k=0〜n−1)

  (Pn−Pk)(x−Q)≧0

 ここまで到達できれば,あとはプログラム作りだけの問題となります.次回は,この多面体の頂点の座標をすべて漏れなく求めることを考えてみます.

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【補】面数公式

 一般に,fkをn次元多面体のk次元面の数とし,

  (f0,f1,・・・,fn-2,fn-1)

を構成要素とするn次元正多胞体では,組み合わせ的方法によって,k次元胞数fkが求められます.たとえば,正単体では

  fk=(n+1,k+1)

なのですが,k=n−1のときfk=n+1であって,胞数はn+1と計算されます.同様に,双対立方体では

  fk=2^k+1(n,k+1),k=n−1のとき,fk=2^n

立方体では

  fk=2^n-k(n,k),k=n−1のとき,fk=2n

となります.

 もちろん,

  正単体:fk=(n+1,k+1)

  双対立方体:fk=2^k+1(n,k+1)

  立方体:fk=2^n-k(n,k)

はオイラー・ポアンカレの定理:

  f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1=1−(−1)^n

すなわち,nが奇数なら2,偶数なら0を満たします.この定理は正多胞体に限らず,n次元凸多胞体について常に成立します.

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