3次元では立方体から直角三角錐を4個取り除くと正四面体,4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるのに対し,5次元以上の空間では直角三角錘を2^n-1個を取り除くと正多面体にならず,1種の準正多面体になる.
n次元空間の正多胞体(n≧5)は
境界胞体 頂点 双対性 対応
(n+1)胞 n胞体 n+1 自己双対 正4面体・5胞体
2n胞体 (2n−2)胞体 2^n 2^n胞体 立方体・8胞体
2^n胞体 n胞体 2n 2n胞体 正8面体・16胞体
の3種類だけであるから,5次元以上の空間では芯(頂点数2^n-1)は正多面体にならず,1種の準正多面体になることがわかる.
2^n=2・2n → 4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.
2^n=2・(n+1) → 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.
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【1】半立方体(hemicube)
n次元の立方体(頂点数2^n)のひとつおきの頂点において,そこと相隣る頂点全体を通る超平面で切り落として残る図形は半立方体(hemicube)と呼ばれる.たまたま,3次元では正四面体,4次元では正16胞体となるが,5次元以上ではそれほど簡単な図形ではない.
5次元の場合は,16個の正5胞体と10個の正16胞体で囲まれた立体(中心対称ではない)である.6次元になると,この図形12個と5次元の正単体32個で囲まれた図形である.
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【2】半立方体の要素数
半立方体(n次元の超立方体において,ひとつおきの頂点(全体で2^n-1個)を結んでできる図形)の要素数を計算してみたところ,やはり,7次元までは個別にうまく計算できたものの8次元でゆきづまりました.n≧4では側面(1次元低い胞)が2種類現れて,次元を下げていってもf4以上で2種類の図形が複雑に絡み合うのが原因です.
3次元:(f0,f1,f2)=(4,6,4) (正四面体)
4次元:(f0,f1,f2,f3)=(8,24,32,16) (正16胞体)
5次元:(f0,f1,f2,f3,f4)=(16,80,160,120,16+10)
6次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5)=(32,240,640,640,192+60,32+12)
7次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5,f6)=(64,672,2240,2800,1344+280,448+84,64+14)
f2は正三角形,f3は正四面体,f4以上で2種類の形の各々の和
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【3】問題の深化
超立方体の頂点をひとつおきにとると別の正多面体になるのは3次元・4次元の特殊性である.5次元以上の空間では正多面体ではなく,1種の準正多面体になることはわかったが,・・・
[Q]3次元では立方体から直角三角錐RTを4個取り除くと正四面体になるが,奇数次元立方体からどのように取り除けばその次元の正単体になるのだろうか?
[A]再び頂点数の整除性を考えると
2^n=2・(n+1) → 2^n-1=n+1,n=3 → 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.
2^n=4・(n+1) → 2^n-2=n+1 → 整数解なし
2^n=8・(n+1) → 2^n-3=n+1 → 整数解なし
一般に,「2^nーk=n+1の整数解を求めよ(n>k)」に対してはグラフを描けばすぐに解は求まるが,この解をグラフを使わないで求めることはできるだろうか?
[1]2^n-k=n+1 (mod2)
n>kのとき,0=n+1 → n=2m−1
n=kのとき,1≠n+1
[2]2^n-k=n+1 (mod4)
n>k+1のとき,0=n+1 → n=4m−1
n=k+1のとき,2≠n+1
n=kのとき,1≠n+1
[3]2^n-k=n+1 (mod8)
n>k+2のとき,0=n+1 → n=8m−1
n=k+2のとき,4=n+1
n=k+1のとき,2≠n+1
n=kのとき,1≠n+1
[4]2^n-k=n+1 (mod16)
n>k+3のとき,0=n+1 → n=16m−1
n=k+3のとき,8≠n+1
n=k+2のとき,4=n+1
n=k+1のとき,2≠n+1
n=kのとき,1≠n+1
となって(NGを除去すれば)n=3,k=1(mod 2^m)であることが示される.したがって,n≧5のとき,整数解なし.
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[Q]4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるが,偶数次元立方体からどのように取り除けばその次元の正軸体になるのだろうか?
[A]再び頂点数の整除性を考えると
2^n=2・2n → 2^n-2=n,n=4 → 4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.
2^n=4・2n → 2^n-3=n → 整数解なし
2^n=8・2n → 2^n-4=n → 整数解なし
[1]2^n-k=n (mod2)
n>kのとき,0=n → n=2m
n=kのとき,1≠n
[2]2^n-k=n (mod4)
n>k+1のとき,0=n → n=4m
n=k+1のとき,2≠n
n=kのとき,1≠n
[3]2^n-k=n (mod8)
n>k+2のとき,0=n → n=8m
n=k+2のとき,4=n
n=k+1のとき,2≠n
n=kのとき,1≠n
[4]2^n-k=n (mod16)
n>k+3のとき,0=n → n=16m
n=k+3のとき,8≠n
n=k+2のとき,4=n
n=k+1のとき,2≠n
n=kのとき,1≠n
となって(NGを除去すれば)n=4,k=2(mod 2^m)であることが示される.したがって,n≧6のとき,整数解なし.
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[Q]2(2^n−1)=2^n+2nの整数解を求めよ
にはれっきとした幾何学的由来がある.グラフを描けばすぐに解は求まるが,この解をグラフを使わないで初等的に求めることはできるだろうか?
2^n−1=2^n-1+n
2^n-1=n+1
[1]2^n-1=n+1 (mod2)
n>1のとき,0=n+1 → n=2m−1
n=1のとき,1≠n+1
[2]2^n-1=n+1 (mod4)
n>2のとき,0=n+1 → n=4m−1
n=2のとき,2≠n+1
n=1のとき,1≠n+1
[3]2^n-1=n+1 (mod8)
n>3のとき,0=n+1 → n=8m−1
n=3のとき,4=n+1
n=2のとき,2≠n+1
n=1のとき,1≠n+1
[4]2^n-1=n+1 (mod16)
n>4のとき,0=n+1 → n=16m−1
n=4のとき,8≠n+1
n=3のとき,4=n+1
n=2のとき,2≠n+1
n=1のとき,1≠n+1
となって(NGを除去すれば)n=3であることが示される.
正多面体の元素定理の観点からすると,3次元と4次元は特殊な次元といえるが,平行多面体の元素定理の観点からは
2(2^n−1)=2^n+2n
の解であるn=3は最も特異な次元である.
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