正の実数a,b,cに対して,
a^2+b^2−2ab=(a−b)^2
a^3+b^3+c^3−3abc=(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}/2
(a+b+c)^2−3(a^2+b^2+c^2)=−{(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}≦0
より,
(a+b+c)^2≦3(a^2+b^2+c^2)
(等号はa=b=cのとき)などは,受験参考書に必ず書いてある.
a^k(a−b)(a−c)+b^k(b−a)(b−c)+c^k(c−a)(c−b)≧0 (シューアの不等式)
も,このコラムの読者であれば簡単に証明できるであろう.それでは,・・・
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【1】三角形に関する不等式(続き)
三角形の3辺の長さを(a,b,c)とするとき,
3(ab+bc+ca)≦(a+b+c)^2<4(ab+bc+ca)
が成り立つ.等号はa=b=cのときに限る.
(証)a^2+b^2≧2ab,b^2+c^2≧2bc,c^2+a^2≧2caを加えると
a^2+b^2+c^2≧ab+bc+ca
両辺に2(ab+bc+ca)を加えると
3(ab+bc+ca)≦(a+b+c)^2
また,(a,b,c)は三角形の3辺の長さなので,
(a−b)^2<c^2,(b−c)^2<a^2,(c−a)^2<b^2
を加えると
a^2+b^2+c^2<2(ab+bc+ca)
両辺に2(ab+bc+ca)を加えると
(a+b+c)^2<4(ab+bc+ca)
そろそろ「算額」を卒業したいと思うが,・・・.
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【2】算額に関する思い出について
一番有名なのは塩竃算額であるが,算額は思いの外沢山あるようだ.東洋数学は問題と結果のみといったが,余接定理などに相当する「法則」の固有の名前はあるようだ.
これは話したことがあるかもしれないが,野田の清水公園に金剛院という寺院があった.ここに最上流の人々の奉納した算額があった.当時,数学を学ぶことを志していた私は,その寺の住職にお願いして,その算額を特別に見せてもらった.
算額はもうほとんど判読不能であったが,この算額を見ながら数学を専攻するために努力することを誓った.
今でも弱気の虫がうずいてくるとそこに行き,その時の覇気を想い出し,決して絶望しまいと言い聞かせることにしている.
この算額はだれかが科学的方法を駆使して判読し,内容を解析したと聞いている. (阪本ひろむ)
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