■行列式と永久式(その3)

 (その2)の補足をしておきたい.n次方程式P(z)=ΣPrz^r=0のすべての解は|z|=1になるというのがリー・ヤンの定理であったが,ここでは係数が実数の一般のn次方程式

  a0x^n+a1x^n-1+・・・+an-1x+an=0

を扱うことにする.

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【1】掛谷の定理

  a0≧a1≧・・・≧an>0のとき,すべての解の絶対値は1より大きくならない.

 少し条件を強くして,実数解しかもたないとすると,係数がすべて正のとき,n個の解はすべて負であるから,どの解の絶対値もa1/a0より小さく,an/an-1より大きい.

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【2】高橋進一の定理

 係数が複素数の場合は少し状況が異なる.

  ak=pk+qki

とおくと,

  p0≧p1≧・・・≧pn>0,q0≧q1≧・・・≧qn>0

のとき,すべての解の絶対値は√2より大きくならない.

 以上のことから,リー・ヤンの定理が如何に特異なものか窺い知ることができるだろう.

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【3】Dixonの定理

 係数が実数の一般のn次方程式

  a0x^n+a1x^n-1+・・・+an-1x+an=0

の解がすべて実数だとすると,

  a0+a1+・・・+an-1+an≦αn・max(a0,a1,・・・,an-1,an)

  αn=(n+1)^n/nCs(n−s)^n-s(s+1)^s,s=[n/2]

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