和算の問題には内接円の大きさを求めよというものが多い.たとえば,
[Q]外円内に甲乙乙丙丙丁の6円が戊円を取り巻いて内外接している.
(甲)
(乙戊乙)
(丙丁丙)
外円の直径は18寸,甲円の直径が3寸のとき,丁円の直径を求めよ.
といった具合である.
ここでは,外円の直径は2R寸,甲円の直径は丙円の直径のm倍のとき,丙円の直径を求めよという類の問題を取り上げて,この問題が解をもつmの範囲はどうなっているのかを一般解の形で求めてみたい.
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【1】狭い側の円の直径の円被覆
d^2=r^2−rR(s+1/s)+R^2
ここで,r≦sRという条件がつくが,これについては問題なし.
また,題意より
R−d−r=2mr
d=R−(2m+1)r
d^2=(2m+1)^2r^2−2(2m+1)rR+R^2
ここで,r≦R/(2m+1)という条件がつく.
これより
4m(m+1)r^2−(4m+2−s−1/s)rR=0
4m(m+1)r−(4m+2−s−1/s)R=0
r=(4m+2−s−1/s)R/4m(m+1)
したがって,m>(s+1/s−2)/4となるが,他の必要条件も満たしているであろうか?
r=(4m+2−s−1/s)R/4m(m+1)≦R/(2m+1)
については
(4m+2−s−1/s)(2m+1)≦4m(m+1)
4m^2+2(2−s−1/s)m+2−s−1/s≦0
m^2+(2−s−1/s)m/2+(2−s−1/s)/4≦0
(m+(2−s−1/s)/4)^2≦−(2−s−1/s)/4+{(2−s−1/s)/4}^2
ここで,c=(s+1/s−2)/4とおくと
(m−c)^2≦c+c^2
以上をまとめると,
c<m≦c+(c+c^2)^1/2,c=(s+1/s−2)/4
[1]n=3のとき
s+1/s=14,b=4,(b+b^2)^1/2=√12
3<m≦3+√12=6.4641
[2]n=4のとき
s+1/s=6,b=1,(b+b^2)^1/2=√2
1<m≦1+√2=2.41421
[3]n=5のとき
s+1/s=22−8√5,b=5−2√5,(b+b^2)^1/2=(50−22√5)^1/2
.527864=5−2√5≦m≦5−2√5+(50−22√5)^1/2=1.42592
[4]n=6のとき
s+1/s=10/3,b=1/3,(b+b^2)^1/2=2/3
1/3≦m≦1
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【2】広い側の円の直径の円被覆
d^2=r^2−rR(s+1/s)+R^2
ここで,r≦sRという条件がつくが,これについては問題なし.
また,d>0のときは,題意より
R+d−r=2mr
d=(2m+1)r−R
d^2=(2m+1)^2r^2−2(2m+1)rR+R^2
ここで,r≧R/(2m+1)という条件がつく.
d<0のときは
R−d−r=2mr
d=R−(2m+1)r
d^2=(2m+1)^2r^2−2(2m+1)rR+R^2
ここで,r≧R/(2m+1)という条件がつく.
どちらの場合も
4m(m+1)r^2−(4m+2−s−1/s)rR=0
4m(m+1)r−(4m+2−s−1/s)R=0
r=(4m+2−s−1/s)R/4m(m+1)
したがって,m≧(s+1/s−2)/4となるが,他の必要条件も満たしているであろうか?
r=(4m+2−s−1/s)R/4m(m+1)≧R/(2m+1)
については
(4m+2−s−1/s)(2m+1)≧4m(m+1)
4m^2+2(2−s−1/s)m+2−s−1/s≧0
m^2+(2−s−1/s)m/2+(2−s−1/s)/4≧0
(m+(2−s−1/s)/4)^2≧−(2−s−1/s)/4+{(2−s−1/s)/4}^2
ここで,c=(s+1/s−2)/4とおくと
(m−c)^2≧c+c^2
以上をまとめると,
m≧c+(c+c^2)^1/2,c=(s+1/s−2)/4
mの上限は規定することができない.
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【3】余録
s+1/s=2(1+(sin(π/n))^2)/(1−(sin(π/n))^2)
=2(1+(sin(π/n))^2)/(cos(π/n))^2
=2((cos(π/n))^21+2(sin(π/n))^2)/(cos(π/n))^2
=2(1+2tan^2(π/n))
であるから,
c=(s+1/s−2)/4=(tan(π/n))^2
(c+c^2)^1/2=tan(π/n)sec(π/n)
c+(c+c^2)^1/2=tan(π/n){tan(π/n)+sec(π/n)}
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