(その7)において,職場のU嬢が「外円内に甲乙乙丙丁の5円が,十字型
(甲)
(乙丁乙)
(丙)
に内外接している.外円の直径は6寸,甲円の直径が2寸のとき,丙円の直径を求めよ」という問題で小生へ挑戦してきたという記事を書いた.1830年一関の和算家・千葉胤秀編集の「算法新書」より出典とある.
シュタイナーの円鎖定理におけるオイラー・フース型定理を使って,5分もかからず解答できた.これで面目躍如と思っていたのであるが,後日談がある.
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後日,彼女が持参した模範解答には,ピタゴラスの定理(スチュアートの定理)を用いた解答が掲げられていた.実は,この解き方は泥臭い解き方法(エレファントな方法)として私の数学仲間のあいだでは評判の悪いものだった.一転して面目丸つぶれとなったが,評価というのはひとそれぞれであって,客観的評価はあり得ないと思える.
したがって,私個人の評価という断り書きを入れておくが,シュタイナーの円鎖定理におけるオイラー・フース型定理はエレガントな方法であるばかりでなく,深い定理である.
たとえば,和算の問題に応用する場合,
[1]この例題の答えが整数となる理由を知ることができる
[2]円の数を増やした例題をいくつでも作ることができる
[3]そのことは直径の円被覆定理に拡張することができる
などのメリットを有している.
数セミの「エレガントな解答を求む」のコーナーで取り上げてもらうことも考えられるが,いずれにせよ,これまでみたことがない新奇な解答が寄せられてきた場合(なかには深いものもあるだろうから)回答者は余程慎重に熟考しなければならない.
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