レムニスケートの場合,その弧と1対1対応する楕円曲線t^2=1−z^4,(x,y)→(t,z)の加法公式を用いたが,楕円y^2=ax^2+bの場合,その弧と1対1対応する楕円曲線
y^2=F(x)=(1+px^2)(1+qx^2)=1+mx^2+nx^4
の加法公式は
z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)
となる.
レムニスケートサインに倣って,楕円サイン関数をx=se[u],y=se[v],z=se[u+v]とおく.k倍角公式でz=αとおいてxを求めるとその点がk等分点に対応する.
たとえば,楕円x^2/4+y^2=1について,
a=−1/4,b=1,p=a/b=−1/4,
q=(a+a^2)/b=−3/16,m=p+q=−7/16,
n=pq=3/64,α=√(−b/a)=2
とおいて,倍角公式
x’=2xy/(1−nx^4)=2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)
の計算結果を図示してみたが,どうもしっくりこない.どこで間違えたのか,あるいは,もともとn等分することができない曲線なのだろうか?
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【1】再考
楕円y^2=ax^2+bの周長は(直交座標系で)
2yy’=2ax→y’=ax/y
1+y’^2=(y^2+a^2x^2)/y^2=(b+(a+a^2)x^2)/(b+xax^2)=(1+(a+a^2)x^2/b)/(1+ax^2/b)
したがって,
∫dx((1+qx^2)/(1+px^2))^1/2
p=a/b,q=(a+a^2)/b
で与えられる.
∫dx((1+qx^2)/(1+px^2))^1/2
=∫dx(1+qx^2)/((1+px^2)(1+qx^2))^1/2
=∫dx/((1+px^2)(1+qx^2))^1/2+∫qx^2dx/((1+px^2)(1+qx^2))^1/2
第1項は第1種楕円積分であるが,楕円の求長問題には余分は第2項がついてしまうのである.第1項だけを計算すると,
[1]k=2
Mathematicaでは,2等分点
se(u/2)=2√(2/3)^1/2=1.63299
は簡単に求まりました.平方根だけを含む式なので幾何学的に作図できることがわかります.また,2次方程式
z=α((1+pz^2)/(1+qz^2))^1/2
を解くと,
z=2√(2/3)=1.63299
が得られることはすぐにでも確かめられます.
[2]k=3
3等分点
se(u/3)=1-(1+(2・2^1/3)/3^2/3)^1/2+(2/3(3ー6^1/3+5/(1+(2・2^1/3)/3^2/3)^1/2)^1/2=1.25364
このように3次方程式に帰着する作図問題は+−×÷√の演算を組み合わせても解けないから,楕円を定規とコンパスだけで3等分することはできないことがわかります.
[3]k=4
4等分でなく,2等分を2回繰り返す方法
se(2u)=2se(u)(1-7/16se^2(u)+3/64se^4(u))^1/2/(1-3/64se^4(u))=(-1+√2)^1/2
を用いると,作図可能な値
se(u/4)=2(1/3(6-3√2-√(6-3√2))^1/2=0.995153
が得られました.
[4]k=5
メモリ不足のため,どうしても5等分点は得られませんでした.
[5]k=6
6等分でなく,3等分したものを2等分する方法
se(2u)=1-(1+(2・2^1/3)/3^2/3)^1/2+(2/3(3ー6^1/3+5/(1+(2・2^1/3)/3^2/3)^1/2)^1/2=1.25364
ではMathematicaで計算できて
se(u/6)=0.692907
ただし,作図は不可能です.
[6]k=8
8等分でなく,4等分したものを2等分する方法
se(2u)=2(1/3(6-3√2-√(6-3√2))^1/2=0.995153
を用いれば作図可能な8等分解が得られます.解析解は長くなるので省略しますが,
se(u/8)=0.527982
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【2】まとめ
以上より,第1項だけを考えても楕円を定規とコンパスだけで3等分することはできないことがわかった.第2項も考えると楕円は2等分すらできない曲線であると思われるのである.
楕円は円を一方向に一定の倍率で伸縮したアフィン変換図形であるが,円のように弧長を2等分,3等分,5等分できないだろう.その意味では円のもつ性質を引きずっていないことになる.
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