ds=dx/(1−x^4)^1/2
において,第1種楕円積分∫dsはレムニスケートの求長問題であるが,y^2=1−x^4の有理数解,したがって,フェルマー方程式z^4=x^4−y^4の整数解を求める問題とほとんど同一の問題である.
それに対して,円錐曲線y^2=ax^2+bの場合,この曲線はa<0のとき楕円,a>0のとき双曲線であるが,ydy/dx=axであるからその線素は
ds=dx((1+qx^2)/(1+px^2))^1/2
p=a/b,q=(a+a^2)/b
で与えられる.円ではa=−1,b=1,p=−1,q=0より
ds=dx/(1−x^2)^1/2
となる.
楕円や双曲線の求長問題∫dsは第2種楕円積分の典型例となっていて,楕円積分にある種の味わいを添えるものである.たとえば,単振り子の振動周期や楕円の弧長を求める問題を考える場合,k[0,1]をパラメータとする不完全積分
f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)
f(x)={(1-k^2x^2)/(1-x^2)}^(1/2)
F(z)=∫(0,z)f(x)dx
が絡んでくる.
楕円積分
f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)
sn^(-1)(x,k)=∫(0,x)f(x)dx
はヤコビの楕円関数の1種であるエスエヌ関数の逆関数である.また,
f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)
K(k)=∫(0,1)f(x)dx
を第1種完全楕円積分,
f(x)={(1-k^2x^2)/(1-x^2)}^(1/2)
E(k)=∫(0,1)f(x)dx
を第2種完全楕円積分と呼ぶ.
第1種楕円積分は特に重要であるが,第1種楕円積分
K(k)=∫(0,1)1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)dx (ヤコビの標準形)
で,x=sinθと変換すると
K(k)=∫(0,π/2)dθ/(1-k^2sin^2θ)^(1/2) (ルジャンドルの標準形)
また,x=sin^2θ,λ=k^2とおけば
K(k)=∫(0,1)dz/{(z(1-z)(1-λz)}^(1/2) (リーマンの標準形)
が成立する.
これらの不定積分は初等関数では表せないが,たとえば,第1種完全楕円積分は
K(k)=π/2{1+(1/2k)^2+(3/8k^2)^2+(5/16k^3)^2+・・・}
とベキ級数展開できる.
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【補】ヤコビの楕円関数
ヤコビは第1種不完全楕円積分
f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)
ω=F(z)=∫(0-Z)f(x)dx
に対して,正弦関数をまねてF-1(ω)をsnω=F-1(ω)と定義し,
sn-1z=∫(0-Z)f(x)dx
を得ました.また,三角関数にならって
cnω=√(1-sn^2ω),dnω=√(1-k^2sn^2ω)
と定義しました.関数sn,cn,dnがヤコビの楕円関数です.また,ヤコビは指数関数に対応するテータ関数(周期関数)で,ヤコビの楕円関数を表すことにも成功しています.
第1種不完全楕円積分において,k→0とすると,
K(0)=∫(0-Z)f(x)dx=sin-1z
k→1とすると,
K(1)=∫(0-Z)f(x)dx=tanh-1z
ですから,snωはsinωとtanhωの中間に位置していることがわかります.実際にベキ級数展開を求めると,
snω=ω-(1+k^2)/6ω^3-(3+2k^2+3k^4)/40ω^5+・・・
が得られます.
また,完全楕円積分を用いると,
楕円:x^2/a^2+y^2/b^2=1の全周は4aE(b/a)
レムニスケート:(x^2+y^2)^2=2a^2(x^2-y^2)の全周は√(8)aK(1/√(2))
糸の長さlの単振り子の周期はT=4√(l/g)K(k)
したがって,振幅が小さいときT〜2π√(l/g)と表すことができます.
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