■ポンスレーの定理におけるオイラー・フース型定理(その2)

 オイラー・フースの定理を拡張する方向としては、ひとつには双心n角形のnを大きくすること,もうひとつには凸n角形の星形化を考えることである.前者はn=8まで解決済みであるが,後者すなわち星形n角形に対してもオイラー・フースもどきの定理は成り立つだろうか? 通例のn角形に対して,1頂点から始めてm個おきの頂点を結んでできる図形を星形n/m角形という.

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【1】ポンスレーの定理と楕円積分

 ポンスレーの定理では楕円積分に帰着させる微分積分学的な証明が知られている.ベルトラン・ヤコビの証明である.

  ∫(φ,φ+π)dθ/(1−k^2sin^2θ)^1/2=nω

披積分関数は周期πの周期関数であるからφの値に依存しない.したがって,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなすというわけである.

 この証明は周期2πは初期位置に依存しないというものであって,m回転後に初期位置に戻ってくるのであれば,周期2mπの楕円積分に置き換えればよい.すなわち,ポンスレーの定理は星形n/m角形に対しても成り立つと思われる.本当だろうか?

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【2】n=5の星形化(星形5/2角形)

 内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,r),B(x2,y2),C(0,R+d)とすると,

  x1cosθ+rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  (R+d)sinφ=r

 また,外接円の中心O(0,d)と点A,点Bとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r−d)^2=R^2

  x2^2+(y2−d)^2=R^2

 θとφを消去するにはどうしたらよいか? まず,(その1)に掲げた双心五角形の場合,すなわち,内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(0,R+d)とすると,

  x1cosθ−rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  (R+d)sinφ=r

 また,外接円の中心O(0,d)と点A,点Bとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r+d)^2=R^2

  x2^2+(y2−d)^2=R^2

と比較してみてほしい.正負符号が一部で逆転するだけである.

 双心五角形の基底は,

  d^6−2d^4rR+8d^2r^3R−3d^4R^2−4d^2r^2R^2+4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4−2rR^5−R^6=0

であるが,r→−rとおくとrの奇数乗の項で正負が逆転し,星形双心五角形の基底は,

  d^6+2d^4rR−8d^2r^3R−3d^4R^2−4d^2r^2R^2−4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4−2rR^5+R^6=0

となる.

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【3】n=7の星形化(星形7/2角形)

 内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,r),B(x2,y2),C(x3,y3),D(0,R+d)とすると,

  x1cosθ+rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  x3cosφ+y3sinφ=r

  x3cosψ+y3sinψ=r

  (R+d)sinψ=r

 また,外接円の中心O(0,d)と点A,点B,点Cとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r−d)^2=R^2

  x2^2+(y2−d)^2=R^2

  x3^2+(y3−d)^2=R^2

 同様に,双心七角形の基底は

  d^12+4d^10rR−24d^8r^3R+32d^6r^5R−6d^10R^2−4d^8r^2R^2−16d^6r^4R^2−20d^8rR^3+64d^6r^3R^3+15d^8R^4+16d^6r^2R^4+32d^4r^4R^4+64d^2r^6R^4+40d^6rR^5−48d^4r^3R^5−32d^2r^5R^5−20d^6R^6−24d^4r^2R^6−16d^2r^4R^6−40d^4rR^7+15d^4R^8+16d^2r^2R^8+20d^2rR^9+8r^3R^9−6d^2R^10−4r^2R^10−4rR^11+R^12=0

であるが,星形7/2角形の基底は,

  d^12−4d^10rR+24d^8r^3R−32d^6r^5R−6d^10R^2−4d^8r^2R^2−16d^6r^4R^2+20d^8rR^3−64d^6r^3R^3+15d^8R^4+16d^6r^2R^4+32d^4r^4R^4+64d^2r^6R^4−40d^6rR^5+48d^4r^3R^5+32d^2r^5R^5−20d^6R^6−24d^4r^2R^6−16d^2r^4R^6+40d^4rR^7+15d^4R^8+16d^2r^2R^8−20d^2rR^9−8r^3R^9−6d^2R^10−4r^2R^10+4rR^11+R^12=0

となる.

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【4】星形7/3角形の場合

 内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(x3,y3),D(0,R+d)とすると,

  x1cosθ−rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  x3cosφ+y3sinφ=r

  x3cosψ+y3sinψ=r

  (R+d)sinψ=r

 また,外接円の中心O(0,d)と点A,点B,点Cとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r+d)^2=R^2

  x2^2+(y2−d)^2=R^2

  x3^2+(y3−d)^2=R^2

 実際に定式化してみると,星形7/3角形では星形でない場合とまったく同一の問題になることがわかるだろう.このことにより,星形7/3角形の場合の解はすでに双心n角形の基底の計算の中に現れていたことになる.

 星形9/4角形では星形9/2角形の場合とまったく同一の問題になる.また,8角形・10角形に対しては星形8/3,10/3角形も考えられるところであるが,この場合も実際に定式化してみると,星形でない場合とまったく同一の問題になることがわかるだろう.

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