一般にR^n内の互いに接するn+2個の球面の系があるとする.このとき,接点がすべて異なるならばこれらn+2個の球面はすべて外接するか,または,ある球面が他のn+1個の球面を含むことになる.このような互いに接するn+2個の球面の系については,球面の半径の逆数に関する単純な等式がある.
(Σ1/ri)^2=nΣ(1/ri)^2
n=2の場合,互いに外接する4個の円の半径の逆数の間の等式
(Σ1/ri)^2=2Σ(1/ri)^2
5個の互いに外接する球に関しては
(Σ1/ri)^2=3Σ(1/ri)^2
が成立する.
[参]細矢治夫「ピタゴラスの三角形とその数理」共立出版
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【1】デカルトの4円定理(1643年)
曲率(半径の逆数)をa,b,c,dとおくと,平面上の互いに接し合う4つの円の間に関係式
2(a^2+b^2+c^2+d^2)=(a+b+c+d)^2
が成り立つ(ひとつの円の内側に他の3円が内接しているときが負号をつける).
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【2】アポロニウスのガスケット
半径1の円の中に半径1/2の円を2つ内接させる.円内の残りの隙間に内接させることのできる最大の円の半径は1/3で,2つ内接させることができる.さらに,円内の残りの隙間に内接させることのできる最大の円の半径は1/6で,4つ内接させることができる.
デカルトの4円定理において,
a=2,b=3,c=6
とおくと,
2(2^2+3^2+6^2+d^2)=(2+3+6+d)^2
2(49+d^2)=(11+d)^2
d^2−22d+23=0
(d+1)(d−23)=0→d=−1,23
3円の隙間に内接させることのできる円の半径は1/23である(d=−1の方は,3円に外接する円である).
a=−1,b=2,c=3
として計算すると,
2((−1)^2+2^2+3^2+d^2)=(−1+2+3+d)^2
2(14+d^2)=(4+d)^2
d^2−8d+12=0
(d−2)(d−6)=0→d=2,6
が得られる.こうして,すべての円の曲率は整数値となることが知られている.
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外円の曲率をd=−6,その中に
a=11,b=14,c=15
の3円を互いに接し合うように内接させる.この場合も互いの接する4円について
2((−6)^2+11^2+14^2+15^2)=(−6+11+14+15^2)=1156
の関係が成立している.これはすべての円の曲率は整数値となる例であるが,一般に限られた場合しか曲率は整数にならない.
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