(その6)に掲げた等時振り子のアニメの評判がいまいちだったので,描き直すことにした.
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【1】振り子の等時性とサイクロイド
ガリレオ・ガリレイは16世紀の終わりにピサの斜塔で有名な落体の実験を試みましたが,さらに大聖堂のシャンデリアの動きから振子の等時性(振り子の振幅が大きくても小さくても1往復に要する時間は同一であること)を発見しています.
糸の長さlに質量mの錘のついた振り子の運動方程式は,
mldθ^2/d^2t=−mgsinθ
で表されますが,
sinθ=θ−1/3!θ^3+1/5!θ^5−・・・
より,小さな振幅に限るとsinθ≒θとしてよいので
mldθ^2/d^2t=−mgθ
となります.
この方程式は線形なので解くことができ,周期
T=2π√l/g
が得られます.したがって,周期はl=25cmで約1秒,l=1mで約2秒となり,振幅には拠りません.
これが有名な「振り子の等時性」ですが,この現象は振幅が小さい場合に限って成立します.しかし,振幅が大きいと,復元力はsinθに比例し,積分は楕円積分となります.その場合の周期として
T=4√(l/g)K(k)
が得られますが,この式は振幅が小さいとき
T〜2π√(l/g)
と近似されます.
現実には振幅はそれ程小さくなく,無視できない差が生じます.周期が振幅に依存しない正確に等時性をもった振り子が作るには,振幅角が大きいとき振子の長さを短くすればよいのですが,等時性からのずれを補正するためにサイクロイドの伸開線・縮閉線を利用します.サイクロイドとは,固定した直線上を円が滑らずに転がるとき,回転円上の固定点のなす軌跡で,その縮閉線はもとのサイクロイドと合同なサイクロイドになります.
ホイヘンスは振り子の重りが,円弧でなくサイクロイド上を動くようにしました.サイクロイドはそれ自身の伸開線であるという性質は歯車にも利用されています.
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サイクロイドにはいくつかの興味深い特性があります.
[1]等時曲線
ホイヘンスはサイクロイドが等時曲線であることを発見しました.等時曲線であるサイクロイドを用いると,周期が振幅に依存しない正確に等時性をもった振り子が作れます.サイクロイド振り子の周期は,回転円の半径をrとすると
T=4π√r/g
です.
[2]最速降下線
1696年,ベルヌーイによってヨーロッパ中の優れた数学者に対して,重力だけの作用の下で滑らかな曲線に沿って運動するとき,到達時間が最小になるような曲線は何か?という「最速降下線」の問題が提出されました.ニュートンは直ちにこれを解き,匿名で解答を送ったが,ベルヌーイはその解法を見てすぐに解答者を知ったという逸話は余りにも有名です.その答えがサイクロイドだったのです.そして,重力場において2点間を滑りおりる最短時間の曲線の問題を解決するために工夫された方法が,のちに変分学に発展しました.
サイクロイドはそもそもガリレイによって発見され,ホイヘンスによって振子時計の設計に使われ,そしてパスカルの積分法の研究にも貢献しています.サイクロイド弧が囲む面積は3πr^2(回転円の面積の3倍に等しい),弧長は8r(回転円に外接する正方形の周に等しい)になります.
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【2】三角の穴をあけるドリル
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【3】ペリトロコイド(n=3の場合)
半径の異なる2つの円があり,半径Rの円に半径r(<R)の円が内接している場合に,半径rの円を固定し,半径Rの円が半径rの円を偏心回転するとき,半径Rの円周上の点Pの軌跡をペリトロコイドといいます.
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