■平面代数曲線とライスの公式(その5)

 曲線は大きく代数曲線と超越曲線の2つに分けられる.したがって,超越曲線とは代数曲線でない曲線であって,対数関数や指数関数がそれに属する.それに対して,

  Σakx^iy^j=0  (i+j≦n)

で表される曲線が次数nの代数曲線である.

 平面内n次曲線f(x,y)=0の一般式の項数は,

  3Hn=n+2Cn=(n+2)(n+1)/2

で計算される.

 次数が3以上の曲線の場合,接線が定義できない点が存在する.この点を特異点という.

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【1】2次曲線

 2変数x,yの多項式f(x,y)=0で定義される曲線を平面代数曲線と呼びます.f(x,y)=0が2次式の場合,その一般式は,

  ax^2+hxy+by^2+cx+dy+e=0

のごとく,項数6の多項式として書くことができます.2次曲線には楕円,放物線,双曲線があり,それらは円錐(必ずしも直円錐でなくてよい)を平面で切断したときの切り口として現れる一群の曲線,すなわち円錐曲線として古代ギリシャにおいて完全に考察されていました.ある緯度の位置に立てられた棒の影の先端が描く曲線は,その緯度によって楕円,放物線,双曲線のいずれかを描きます.

 2点を決めれば2点を通る直線の方程式は得られます.2次曲線の方程式は

  ax^2+hxy+by^2+cx+dy+1=0

で与えられるので,代数的には平面上の任意の位置にある5点が唯一の円錐曲線を決定します.ニュートンは「プリンキピア」のなかで5点を通る円錐曲線の作図法などを案出しながら壮大な天体力学を展開しています.

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【2】3次曲線

 同様に,3次曲線とはf(x,y)=0が2変数x,yの3次あるいは3次以下の方程式で与えられた曲線です.ニュートンは任意の3次曲線がアフィン変換により

  ax^3+bx^2y+cxy^2+dx^2+exy+fy^2+gx+hy+i=0

という形で与えられることに注目しました.

 3次曲線の分類には,2次曲線とは異なった種類の難解さが要求されましたが,ニュートンはあらゆる場合を考察して,最終的に3次曲線は全部で78種類が必要であることを示すに至り,さらに3次曲線の一般式が5個の標準形に帰することを示しました.ニュートンはこうした研究を応用して,2次曲線上の5点,3次曲線上の7点が与えられた場合にこれを作図する方法を見いだしています.

[補]ニュートンは係数の値によってとりうる3次曲線の形を72種類挙げた.しかし,実際には78種類あり,残り6種類のうち4種類はスターリング,2種類はニコルとベルヌーイが発見している.

[補]代数幾何学において重要な変換に双有理変換(クレモナ変換)があるが,ニュートンは楕円,放物線,双曲線から3次曲線を得るのに双有理変換を使っている.この例からわかるように代数曲線の次数は双有理変換で不変ではないが,種数は不変である.すなわち,ニュートンは代数操作という変換を用いており,78種類というのは(幾何学的な分類ではなく)代数的な分類となっている.プリュカーは幾何学的な分類方法によって3次曲線を219種に分類している(1835年).

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【3】4次曲線

 ニュートンの3次曲線の分類に引き続いて,オイラーは4次平面曲線の分類を企てましたが,可能な場合の数が非常に多いという理由で断念しています.この問題に対する答えは長い間知られていなかったのですが,プリュッカーが19世紀に4次曲線の152の型を数え上げることによって解かれました.プリュッカーはオイラーが4次曲線の分類で犯した多くの誤りを見つけたのですが,18世紀の解析幾何とは違って,高次曲線,曲面は解析幾何の対象ではなく,代数幾何の分野となりました.

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