レムニスケート関数と三角関数の類似性がレムニスケート関数の理論を構築する助けとなった.たとえば,三角関数の加法公式
z={x(1−y^2)^1/2+y(1−x^2)^1/2}
x=sin[u],y=sin[v],z=sin[u+v]
に対して,レムニスケート関数の加法公式は
z={x(1−y^4)^1/2+y(1−x^4)^1/2}/(1+x^2y^2)
x=sl[u],y=sl[v],z=sl[u+v]
である.ここで注意しておきたいことはy=(k−1)xではなく,v=(k−1)uとして得られる式がk倍角公式である.
===================================
【1】y^2=F(x)=1+mx^2+nx^4の場合
このとき,微分方程式
dx/(1+mx^2+nx^4)^1/2=dy/(1+my^2+ny^4)
の一般解は
−nc^2x^2y^2+x^2+y^2=c^2+2xy(1+mc^2+nc^4)^1/2
で与えられる.
yに関する2次方程式
y^2(1−c^2x^2)−2yx(1+mc^2+nc^4)^1/2x+x^2−c^2=0
を解いて,
y={x(1+mc^2+nc^4)^1/2±c(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nc^2x^2)
c=0の場合が自明な解x=y.1+mc^2+nc^4=0の場合,
y=c(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nc^2x^2)
が反転公式である.
ここで,適宜変数を置き換えると,加法・減法公式
x’={x(1+my^2+ny^4)^1/2±y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)
が得られる.レムニスケートではm=0,n=−1より,加法・減法公式は
x’={x(1−y^4)^1/2±y(1−x^4)^1/2}/(1+x^2y^2)
楕円曲線y^2=1+mx^2+nx^4において,A(0,1),B(a,b)にとれば,b^2=1+ma^2+na^4となるが,このとき,加法・減法公式は
x’=(bx±ay)/(1−na^2x^2)
と表すことができる.さらに加法公式においてx=yとおけば,
x’=2xy/(1−nx^4)=2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)
となって,倍角公式を得ることができる.
===================================
【2】(n,m)=(3,3),(3,5)の場合
弧長が積分
I=∫(c,1)dx/(1−x^3)^1/2
で表される曲線の等分点を求める問題は,加法公式
z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)
k=(√2+√6)/4,k^2=(2+√3)/4
m=−(1+k^2),n=k^2,α=(4√3−6)^1/2
の問題に還元されたことになる.
3倍角公式ではy=2xとおくのではなく
x=s[u],y=s[v],z=s[u+v]
において,v=2uとおかなければならない.
s(3u)=(s(u)(1+ms(2u)+ns(2u)^4)^1/2+s(2u)(1+ms(u)^2+ns(u)^4)^1/2}/(1−ns(u)^2s(2u)^2)=α
を解くと数値解
s(u)=0.549687
また,5倍角公式s(3u)=α
を解くと
s(u)=0.353687
が得られたが,解析解は得られなかった.
阪本ひろむ氏の計算から(n,m)=(3,3),(3,5)は作図不可能であることが示唆されるのである.
===================================
【3】まとめ
周長が
∫(0,x)1/(1-x^n)^(1/2)dx (n=1~6)
で与えられる曲線をm等分する問題を考えてきた.等分される曲線は整数分の1という条件が付いているだけで,もちろん,それそれの長さは無理数でもかまわない.
これまで調べた結果,
[1]任意等分可能・・・・・・カージオイド
[2]2^mΠpi 等分可能・・・円,レムニスケート
[3]2^m等分可能・・・・・・r^3/2=cos(3θ/2),r^3=cos(3θ)
[4]2等分すら不可能・・・・r^5/2=cos(5θ/2)
と分類できるという予想は正しいようである.
もし,n倍角公式
s(nu)=α (αは定数)
をs(u)について解いて,作図可能解が得られるならば,
s(mu)=(s(nu)=α)
とすれば,mn等分点が芋づる式に得られることになる.
n倍角公式
s(nu)=a (aは一般の不定変数)
をs(u)について解いて,それにαを代入する計算方法が正解だったかもしれない.
===================================