■初等幾何の楽しみ(その81)

 レムニスケート関数と三角関数の類似性がレムニスケート関数の理論を構築する助けとなった.たとえば,三角関数の加法公式

  z={x(1−y^2)^1/2+y(1−x^2)^1/2}

  x=sin[u],y=sin[v],z=sin[u+v]

に対して,レムニスケート関数の加法公式は

  z={x(1−y^4)^1/2+y(1−x^4)^1/2}/(1+x^2y^2)

  x=sl[u],y=sl[v],z=sl[u+v]

である.ここで注意しておきたいことはy=(k−1)xではなく,v=(k−1)uとして得られる式がk倍角公式である.

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【1】y^2=F(x)=1+mx^2+nx^4の場合

 このとき,微分方程式

  dx/(1+mx^2+nx^4)^1/2=dy/(1+my^2+ny^4)

の一般解は

  −nc^2x^2y^2+x^2+y^2=c^2+2xy(1+mc^2+nc^4)^1/2

で与えられる.

 yに関する2次方程式

  y^2(1−c^2x^2)−2yx(1+mc^2+nc^4)^1/2x+x^2−c^2=0

を解いて,

  y={x(1+mc^2+nc^4)^1/2±c(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nc^2x^2)

 c=0の場合が自明な解x=y.1+mc^2+nc^4=0の場合,

  y=c(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nc^2x^2)

が反転公式である.

 ここで,適宜変数を置き換えると,加法・減法公式

  x’={x(1+my^2+ny^4)^1/2±y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)

が得られる.レムニスケートではm=0,n=−1より,加法・減法公式は

  x’={x(1−y^4)^1/2±y(1−x^4)^1/2}/(1+x^2y^2)

 楕円曲線y^2=1+mx^2+nx^4において,A(0,1),B(a,b)にとれば,b^2=1+ma^2+na^4となるが,このとき,加法・減法公式は

  x’=(bx±ay)/(1−na^2x^2)

と表すことができる.さらに加法公式においてx=yとおけば,

  x’=2xy/(1−nx^4)=2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)

となって,倍角公式を得ることができる.

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【2】(n,m)=(3,3),(3,5)の場合

 弧長が積分

  I=∫(c,1)dx/(1−x^3)^1/2

で表される曲線の等分点を求める問題は,加法公式

  z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)

  k=(√2+√6)/4,k^2=(2+√3)/4

  m=−(1+k^2),n=k^2,α=(4√3−6)^1/2

の問題に還元されたことになる.

 3倍角公式ではy=2xとおくのではなく

  x=s[u],y=s[v],z=s[u+v]

において,v=2uとおかなければならない.

  s(3u)=(s(u)(1+ms(2u)+ns(2u)^4)^1/2+s(2u)(1+ms(u)^2+ns(u)^4)^1/2}/(1−ns(u)^2s(2u)^2)=α

を解くと数値解

  s(u)=0.549687

また,5倍角公式s(3u)=α

を解くと

  s(u)=0.353687

が得られたが,解析解は得られなかった.

 阪本ひろむ氏の計算から(n,m)=(3,3),(3,5)は作図不可能であることが示唆されるのである.

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【3】まとめ

 周長が

  ∫(0,x)1/(1-x^n)^(1/2)dx   (n=1~6)

で与えられる曲線をm等分する問題を考えてきた.等分される曲線は整数分の1という条件が付いているだけで,もちろん,それそれの長さは無理数でもかまわない.

 これまで調べた結果,

[1]任意等分可能・・・・・・カージオイド

[2]2^mΠpi 等分可能・・・円,レムニスケート

[3]2^m等分可能・・・・・・r^3/2=cos(3θ/2),r^3=cos(3θ)

[4]2等分すら不可能・・・・r^5/2=cos(5θ/2)

と分類できるという予想は正しいようである.

 もし,n倍角公式

  s(nu)=α  (αは定数)

をs(u)について解いて,作図可能解が得られるならば,

  s(mu)=(s(nu)=α)

とすれば,mn等分点が芋づる式に得られることになる.

 n倍角公式

  s(nu)=a  (aは一般の不定変数)

をs(u)について解いて,それにαを代入する計算方法が正解だったかもしれない.

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