x^n−1の因数分解が,nの約数dを使って次のように書かれることを考えます.
x−1=Φ1(x)
x^2−1=Φ1(x)Φ2(x)
x^3−1=Φ1(x)Φ3(x)
x^4−1=Φ1(x)Φ2(x)Φ4(x)
x^5−1=Φ1(x)Φ5(x)
x^6−1=Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)Φ6(x)
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x^18−1=Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)Φ6(x)Φ9(x)Φ18(x)
x^36−1=Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)Φ4(x)Φ6(x)Φ9(x)Φ12(x)Φ18(x)Φ36(x)
すると,円分多項式は
Φ1(x)=x−1
Φ2(x)=x+1
Φ3(x)=x^2+x+1
Φ4(x)=x^2+1
Φ5(x)=x^4+x^3+x^2+x+1
Φ6(x)=x^2−x+1
Φ7(x)=x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1x−1
Φ8(x)=x^4+1
Φ9(x)=x^6+x^3+1
Φ12(x)=x^4−x^2+1
Φ15(x)=x^8−x^7+x^5−x^4+x^3−x+1
Φ16(x)=x^8+1
Φ18(x)=x^6−x^3+1
Φ24(x)=x^8−x^4+1
Φ36(x)=x^12−x^6+1
と定まります.
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【1】円分多項式の解
[1]Φ1(x)=x−1=0
x=1
[2]Φ2(x)=x+1=0
x=−1
[3]Φ3(x)=x^2+x+1=0
x=(−1±i√3)/2=ω,ω^2
[4]Φ4(x)=x^2+1=0
x=±i
[5]Φ6(x)=x^2−x+1=0
x=(1±i√3)/2
[6]Φ5(x)=x^4+x^3+x^2+x+1=0
ガウス平面で正5角形の頂点を表す4次方程式
x^4+x^3+x^2+x+1=0
の両辺をx^2でわり,
x^2+x+1+1/x+1/x^2=0 (相反方程式)
y=x+1/x=2cos(2π/5)
と変数変換すると2次方程式
y^2+y−1=0
に帰着され,
y=(√5−1)/2=2cos(2π/5)
cos(2π/5)=(√5−1)/4
が得られる.
正三角形。正方形,正六角形に較べ,正5角形はなぜ描くのが難しいのかという問いに対するい答えは円分多項式にあるというわけですが,作図可能であることを示すためには2次方程式に帰着させればよく,作図方法を見つける必要はありません.
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【2】正七角形
円分多項式を相反多項式にして
y=x+1/x
とおくと
y=2cos(2π/n)
が得られます.
正七角形の場合の円分多項式
x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1x+1=0
では
y=2cos(2π/7)
になるというわけです.
ここでは複素数(円分多項式)を使わずに,正七角形が作図不可能であることを証明します.
[1]cos(π/7)
cos(π/7)が3次方程式:8x^3−4x^2−4x+1=0の解として得られます.
x=1/6{1+√7cos(1/3arctan3√3)+√21sin(1/3arctan3√3)}=0.900969
すぐに思いつくのは7倍角の公式
cos7θ=64cos^7θ−112cos^5+56cos^3−7cosθ
において,θ=π/7,cosθ=xとおくと
64x^7−112x^5+56x^3−7x=−1
7次方程式の解として得られるというものであるが,3次方程式に還元させてみよう.
θ=π/7,cosθ=xとおくと
7θ=π,4θ=π−3θ
より,
cos4θ=−cos3θあるいはsin4θ=sin3θ
前者は4次方程式
8cos^4θ−8cos^2θ+1=−4cos^3θ+3cosθ
後者は
8sinθcos^3θ−4sinθcosθ=−4sin^3θ+3sinθ
8cos^3θ−4cosθ=−4sin^2θ+3
8cos^3θ−4cosθ=4cos^2θ−1
より3次方程式:8x^3−4x^2−4x+1=0に帰着する.後者の方が方程式の次数が下がり,(n−1)/2次方程式となることがおわかりいただけるであろう.
[2]cos(2π/7)
θ=2π/7,cosθ=xとおくと
7θ=2π,4θ=2π−3θ
より,
cos4θ=cos3θあるいはsin4θ=−sin3θ
前者は4次方程式
8cos^4θ−8cos^2θ+1=4cos^3θ−3cosθ
後者は
8sinθcos^3θ−4sinθcosθ=4sin^3θ−3sinθ
8cos^3θ−4cosθ=4sin^2θ−3
8cos^3θ−4cosθ=−4cos^2θ+1
より3次方程式:8x^3+4x^2−4x−1=0に帰着するというわけである.
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【3】正九角形
正9角形はx=cos(π/9)とおくと,3倍角の公式
4x^3−3x=cos(π/3)=1/2
より,3次方程式:8x^3 −6x−1=0に帰着します.あるいは,θ=π/9,cosθ=xとおくと
9θ=π,5θ=π−4θ
より,
cos5θ=−cos4θあるいはsin5θ=sin4θ
前者は5次方程式
16cos^5θ−20cos^3θ+5cosθ=−8cos^4θ+8cos^2θ−1
となるが,後者は
16sin^5θ−20sin^3θ+5sinθ=8sinθcos^3θ−4sinθcosθ
16sin^4θ−20sin^2θ+5=8cos^3θ−4cosθ
よりcosθ関する3次方程式に帰着するというわけである.
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【4】雑感
cos(π/7)は8x^3−4x^2−4x+1=0に帰着するのに対して,cos(2π/7)は8x^3+4x^2−4x−1=0に帰着する.
係数の符号が異なるが,前者ではθ=π/7,cosθ=xとおくと
7θ=π,4θ=π−3θ
より,
cos4θ=−cos3θあるいはsin4θ=sin3θ
後者では
θ=2π/7,cosθ=xとおくと
7θ=2π,4θ=2π−3θ
より,
cos4θ=cos3θあるいはsin4θ=−sin3θ
となるからである.
この事情はcos(π/5)とcos(2π/5),cos(π/9)とcos(2π/9)でも同様である.
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