■ベルヌーイのレムニスケート(その2)

 蒸気エンジンのピストンロッドを動かすためには,中点はほぼ直線上を動いた方が都合がいい.そのためには,ワットのリンク装置(リンケージ)が描く曲線はベルヌーイのレムニスケートではないほうがよいことに気づいた.

 ベルヌーイのレムニスケートではR=a√2であったが,そのためには2R<2aとして左右の回転軸を逆向きに動かせば中点は概ねその間のバランスのとれたところにとどまり,ほぼ直線の長い部分をもつ8の字型曲線に沿って描くことになる.

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【1】ゲロンのレムニスケート

 ゲロンはフランスの数学者.Geronoのレムニスケート:

  (x,y)=(cosθ,sinθcosθ)=(cosθ,sin2θ/2)

はベルヌーイのレムニスケートより長い直線部分をもつ8の字型曲線である.

 ゲロンのレムニスケートはリサージュ曲線の1つとして知られている.すなわち,

  x=Asin(ω1t+φ1)

  y=Bsin(ω2t+φ2)

において,

  B=A/2,ω2=2ω1,φ1=π/2,φ2=0

とおけばよい.したがって,ワットのリンク装置(リンケージ)が描く曲線ではないことになる.

 なお,ゲロンのレムニスケート:y^2=x^2−x^4も

  x=sinθ=(1−t^2)/(1+t^2)

  y=sinθcosθ=2t(1−t^2)/(1+t^2)^2

とパラメトライズされるから,ベルヌーイのレムニスケート:(x^2+y^2)^2=(x^2−y^2)もゲロンのレムニスケート:y^2=x^2−x^4も有理曲線というわけである.

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