円C1に内接する正三角形,その正三角形に内接する円C2を考えると,
C2=C1/2
である.
一般に,与えられた三角形の外接円の半径Rおよび内接円の半径rとおくと,
R≧2r 等号は正三角形のときに限る.
となる.
(証明のヒント)
外接円と内接円の中心間の距離をdとおくとき,R^2−2Rr=d^2が成り立ちます(オイラーの定理).この関係式を導き出せば,ただちにR≧2rがわかるのですが,この関係式を導き出すことは見かけよりもやっかいで,ヘロンの公式を使ったほうがほうが簡単です.
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【1】高次元への拡張
この不等式は
R/r≧2
とも書けるのですが,Rとrは対称となる図形を外と内から押さえるものですから,R/rに関するこの不等式は「球殻不等式」と呼ぶこともできるでしょう.すなわち,R/rが最小となるもの(最小球殻)を求める問題と考えることができるのです.
球殻不等式:R≧2rは3次元空間へも拡張できて,4面体では
R≧3r (4面体不等式)
三角形の重心の性質は四面体に遺伝するのです.
また,4次元以上でもこの規則性が失われることはありそうもなく,同様に類推されます.すなわち,n次元単体でも同様に
R≧nr (単体不等式)
が成り立ちます.一般に,体積が与えられた単体において,頂点からある任意の点までの距離の和は,その単体が正則でありかつその点が重心であるときに極小値に達します.
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【2】多角形への拡張
n次元単体について,
R/r≧n
を示しましたが,ここでは次元を大きくするのではなく,辺数nを大きくしてn角形へ拡張してみましょう.そうすると,任意の凸n角形において,不等式
R/r≧sec(π/n)
等号は正n角形の場合にのみ成り立ちます.
(証明)
単位円に内接する凸n角形の周長Lは
L=2(sinα1+・・・+sinαn)
これより,
L≦2nsin(π/n)
また,外接する場合,
L=2(tanα1+・・・+tanαn)
L≧2ntan(π/n)
一般に,凸n角形の面積S,周長L,内接円の半径r,外接円の半径Rの間には,次の不等式が成り立ちます.
2nrtan(π/n)≦L≦2nRsin(π/n)
nr^2tan(π/n)≦S≦1/2nR^2sin(2π/n)
等号は正n角形の場合にのみ成り立ちますから,定円に外接するn角形の中で,正n角形は周長・面積が最小であり,内接するn角形の中で,正n角形は周長・面積が最大となります.このことは直観的にも理解されるでしょう.
以上より,
R/r≧sec(π/n)
が得られます.とくに,n=3の場合,sec(π/3)=2より,
R/r≧2
となります.
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次に,多角形でなく,多面体の場合を考えてみるために,
ωn=n/(n−2)・π/6 n≧3
を導入しておきます.球面上にn個の点を配置した場合,2n−4はn個の頂点をもつ三角形面正多面体の面数となりますから,△n=6ωn−πは単位球面が分割されてできる球面三角形の平均面積,また,球面正三角形の場合,2ωnは面積が6ωn−πの球面正三角形△nの1つの内角を表しています.
n個の頂点またはn個の面をもつ凸多面体の内接球半径rおよび外接球半径Rの間には,球殻不等式
R/r≧√3tanωn
が成立します.n=4のとき,ωn=π/3.したがって,
R/r≧3 (4面体不等式)
が得られます.
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【3】非同心円化
R^2−2Rr=d^2 (オイラーの定理)
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2 (フースの定理)
に引き続き,フースは双心五角形,六角形,七角形,八角形に関する同様の公式も見つけているが,その論文(Nova Acta Petropol XIII, 1798)を入手するのは難しそうである.
ポンスレーの定理と解析幾何学を用いると
R^2−2Rr=d^2 (オイラーの定理)
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2 (フースの定理)
は大学入試程度の問題に還元できることがわかった.
[1]双心三角形
R^2−2Rr=d^2 (オイラーの定理)
[2]双心四角形
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2 (フースの定理)
[3]双心五角形
d^6−2d^4rR+8d^2r^3R−3d^4R^2−4d^2r^2R^2+4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4−2rR^5−R^6=0
[4]双心六角形
3d^8−4d^6r^2−12d^6R^2+4d^4r^2R^2−16d^2r^4R^2+18d^4R^4+4d^2r^2R^4−12d^2R^6−4r^2R^6+3R^8=0
[5]双心七角形
d^12+4d^10rR−24d^8r^3R+32d^6r^5R−6d^10R^2−4d^8r^2R^2−16d^6r^4R^2−20d^8rR^3+64d^6r^3R^3+15d^8R^4+16d^6r^2R^4+32d^4r^4R^4+64d^2r^6R^4+40d^6rR^5−48d^4r^3R^5−32d^2r^5R^5−20d^6R^6−24d^4r^2R^6−16d^2r^4R^6−40d^4rR^7+15d^4R^8+16d^2r^2R^8+20d^2rR^9+8r^3R^9−6d^2R^10−4r^2R^10−4rR^11+R^12=0
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