■フラクタル構造と非微分可能曲線(その2)

【1】実数のm進展開の分布とハウスドルフ次元

 実数のm進展開は0〜m−1の数字で表されますが,各数字(0〜m−1)の出現確率をp0,p1,・・・,pm-1

  Σpk=1,すなわち,p0+p1+・・・+pm-1=1

とします.

 0と1の間の数のうち,ほとんどの実数はm進展開したとき,各桁に現れる数字の出現確率が均等であることが知られています(正規数).

 また,F(p0,p1,・・・,pm-1)を[0,1)上の実数で,各桁に現れる数字(0〜m−1)の出現確率がp0,p1,・・・,pm-1であるような実数の集合とすると,Fのハウスドルフ次元dimFは

  dimF=−Σpklogpk/logm

で定義されます.正規数の集合F(1/m,・・・,1/m)のルベーグ測度1であり,したがって,その次元も1となります.

 また,0・log0=0と約束しておくことにして,[0,1]を3等分して中央の区間を取り除くという操作を繰り返します.このようにして得られる3分割カントル集合は最も有名なフラクタル集合の1例です.3分割カントル集合は3進展開の各桁に1の現れない数の集合F(1/2,0,1/2)ですが,そのハウスドルフ次元は

  log2/log3=0.6309・・・

となります.

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【2】カントルのミドル・サード集合

 実数t(0≦t≦1)は3進表現

  t=a0/3+a1/3^2+・・・+an/3^n+1+・・・

をもつが,カントルのミドル・サード集合Γはanが0または2のみをとる実数tの集合として定義してよい.

 したがって,

  Γ={t|t=2a0/3+2a1/3^2+・・・+2an/3^n+1+・・・=Σ(0,∞)2an/3^n+1:ただし,anは0または1のみをとる}

(2進表現)と等価である.

   f(t)=0      (0≦t≦1/3)

   f(t)=3t−1   (1/3≦t≦2/3)

   f(t)=1      (2/3≦t≦1)

この定義をすべての実数tに拡張して,f(t)は周期2の周期的偶関数とする.

  f(−t)=f(t),f(t+2)=f(t)

 tがΓに含まれるとき,この関数の重要な性質はΓ上で恒等式

  t=Σ(0,∞)2f(3^nt)/3^n+1

  an=f(3^nt)=0または1

が成り立つことである.

 このことを用いると,t(0≦t≦1)をΓに制限してもペアノ曲線が正方形や立方体を覆うことができるいたるところで微分不可能な連続曲線であることが証明されるのである.

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