半径2rの円が半径R=3rの円の内側を転がるとき,円上の固定された直径の描く包絡線はデルトイドになるわけですが,デルトイドの場合,この直径の両端も同じデルトイド上にあります.
このようにデルトイドでは半径2rの円上の定点の軌跡としても与えられますし,また,円周上を反時計回りと時計回りに動く2点P,Qがあり,点Pは点Qの2倍の速さで動くとき,直線PQの包絡線もデルトイドになります.
これにより「デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定である」という性質が生じます.これはデルトイドでは長さ4rの棒をデルトイドに接しながら1回転することができるというのと同一です.
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【1】直交座標を用いて
デルトイド
x=2cost+cos2t
y=2sint−sin2t
の場合,tで微分すると
x’=−2sint−2sin2t
y’=2cost−2cos2t
ですから,
dy/dx=−(cost−cos2t)/(sint+sin2t)
これをmとおいて,
y−y0=m(x−x0)
を整理すると,接線の方程式
(1−cost)x+(sint)y=cost−cos2t
が得られる.
また,エピサイクロイド(カージオイド,ネフロイドなど),ハイポサイクロド(デルトイド,アステロイドなど)は,サイクロイドとは異なり代数曲線であり,直交座標系におけるデルトイドの方程式は
f(x,y)=(x^2+12x+9+y^2)^2−4(2x+3)^3
=(x^2+y^2)^2+18(x^2+y^2)−8x(x^2−3y^2)−27=0
と表される.
(1−cost)x+(sint)y=cost−cos2t
を代入するとxに関する4次方程式となるが,この方程式は
(x−2cost−cos2t)^2
で割り切れるから,残りの2根は
(x+2cost/2−cost)(x−2cost/2−cost)
より求めることができる.すなわち,π−t/2,2π−t/2となることが示される・・・はずである.しかし,実際にはこの因数分解は大変面倒な作業となる.
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dy/dx=−(1−cost)/sint=tan(−t/2)
すなわち,接ベクトルの偏角が−t/2であることに気づけばπ−t/2,2π−t/2を容易に示すことができる.その結果,
P1(−2cost/2+cost, 2sint/2+sint)
P2( 2cost/2+cost,−2sinθ/2+sint)
これからP1P2=4(一定)となることがわかる.すなわち,デルトイドは3つの尖点をもつ図形であるが,デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定であるという性質をもつのである.
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【2】複素数を用いて
動円の半径rのデルトイドでは長さ4rの棒をデルトイドに接しながら1回転することができるというのと同じことを今度は複素数を用いて表してみる.
半径1/4の回転円が半径3/4の固定円に内接して滑ることなく転がっていくとき,回転円の周上の点の軌跡を考えると,
z=f(t)=1/2exp(it)+1/4exp(−2it)
パラメータt0における接ベクトルの偏角は−t0/2なので,接線の両端では
t1=−t0/2,t2=−t0/2+π
f(t1)−f(t0)= exp(−it0/2)sin^23t0/4
f(t2)−f(t0)=−exp(−it0/2)cos^23t0/4
これより,
|f(t1)−f(t2)|=1
が示される.
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【3】雑感
デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定であるという性質はシュタイナーを待たずともかなり以前から知られていたはずである.したがって,ここに掲げたものよりももっと簡単な図形的証明があるに違いない.
なお,ここで注意しなければならないことは,tは点P(x,y)の極座標(r,θ)のパラメータではないことである.そのため,デルトイドの面積を
S=1/2∫r^2dt r^2=x^2+y^2
として計算すると
S=(n^2−2n+2)・πr^2
となって,正しい値
S=(n−1)(n−2)・πr^2
は得られない.
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